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2014-02-01 00:00
日本は米国外交の「不在」を埋める努力を
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
オバマ政権が米国の対外関与に消極的であり、自由主義、民主主義、法の支配を是とするグローバル秩序の守護者としての米国の役割を顧みない傾向にあることは、かねてより指摘されているところである。1月28日の一般教書演説は、改めてそれを裏付けたに過ぎないが、やはり、同演説はかなり酷いものであった。オバマ大統領は一般教書演説で、「真に必要でなければ、軍を危険な地に送ることはない」といい、アジア太平洋政策については、「アジア太平洋に焦点を当て続け、同盟国を支持し、より安全で繁栄した未来を作る」とだけ短く触れ、具体策は何も示していない。アジア太平洋への言及の少なさが、国内での報道では大きく取り上げられているようであり、それはその通りだが、「アジア太平洋軽視」は第二期オバマ政権の特徴である。
むしろ、驚かされたのは、シリアに関するくだりである。オバマ大統領は、シリアが化学兵器の廃棄・解体に同意したことについて、「力を裏付けとした米国の外交のゆえである」と述べた。しかし、オバマ政権のシリア政策が支離滅裂であるのは周知の事実である。反乱軍を支援するため空爆すると一旦表明した直後に、法的に全く必要でない議会の承認を得ると言いだして、結局取りやめた。そして、ロシアの調停案に飛びついた結果、ロシア主導で、化学兵器の廃棄・解体という妥協案が成ったのである。その化学兵器の廃棄・解体も、前途は必ずしも万全とは言い切れない。これを「米国の力の裏付けに基づいた外交の成果」などと言うのは、オバマ政権の、現実認識能力の著しい欠如、無能力でなければ、不誠実極まりない牽強付会であると言わざるを得ない。これは、オバマ政権の外交姿勢をよく表している。
保守の立場から定期的に「ワシントン・ポスト」のブログに寄稿しているジェニファー・ルービン女史は、オバマは「カーター大統領を上回る最悪の最高司令官」であり「史上最も真摯でない最高司令官」である、と1月29日付の同紙ブログで酷評しているが、言い得て妙である。こういうオバマの米国に、あと3年近くは付き合わなければならない。これは、言うまでもなく、世界の秩序にとって大きなマイナスであるが、他の現状維持を是とする国々が協力して補っていく他ない。我が国が果たすべき役割はそれだけ大きく、他方、チャンスも大きいと言える。安倍総理の言う「積極平和主義」、「地球儀俯瞰外交」が、いよいよ価値を持ってくる。
もちろん、我が国には、世界秩序の維持において、米国の代わりを務める能力はないが、少なくとも、アジア太平洋においては大きな役割を果たし得る。国際的法の支配に基づく海洋安全保障を追求するために、有志国と協力を深めるべきである。地域の主要民主主義国である印、豪、またASEAN諸国との連携強化をさらに促進する必要がある。この際、武器輸出三原則の見直しが急務である。武器および武器技術の貿易は、外交安全保障政策の重要なツールだからである。安倍総理は、武器輸出三原則に代わる新しい武器輸出ガイドラインを策定する、と言っている。また、集団的自衛権の行使容認も不可欠である。着実にそれらを進めることが、強く期待される。日米同盟の深化も、オバマ政権の姿勢に関わらず、実務者レベルでは進展するであろうし、そうしなければならない。これらは、現在必要であるだけでなく、オバマ政権が去った後、米国にもっと望ましい政権ができた際に、日米関係を大きく進展させる財産になるであろう。
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