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2014-03-29 00:00
国際秩序に挑戦するロシア
船田 元
元経済企画庁長官
冬季オリンピックとパラリンピックが開催されたソチは、クリミア半島の約300キロ東に位置する。また第二次世界大戦終結後の世界秩序を決める会議が開かれたヤルタは、まさにクリミア半島の只中にある。旧ソ連の崩壊後にウクライナは独立したが、その南部のクリミア半島は、気候も比較的温暖なため、引き続き、旧ソ連時代以来の有数な保養地になっている。またここはロシア系住民も多く住んでいて、ロシアとの関係は密接である。
ウクライナでは以前から、親露派のヤヌコビッチ政権に対する国民の不満が溜まっていたが、EU加盟の是非をめぐって国内対立が激しくなり、ヤヌコビッチ政権は打倒された。一気にEUに接近しようとする新政権に危機感を抱いたプーチン大統領は、自警部隊を装うロシア軍の圧力のもとで、クリミア自治共和国のロシア編入の是非を問う住民投票を強行した。投票の結果はロシアへの編入を支持するもので、プーチン大統領は手際良く編入手続きを進めた。同大統領は「国際法上何の問題もない」と強調するが、そもそもウクライナ憲法には「領土の分割には国民投票の承認が必要」と書いてあり、クリミア半島のみの投票は、明らかに憲法違反であり、プーチン大統領の主張は間違っている。
この動きに対して欧米諸国は反発して、アメリカをはじめとして経済制裁を矢継ぎ早やに実施している。日本も、安倍総理とプーチン大統領の緊密な友好関係はあるものの、しばらくは欧米の動きに同調せざるを得ない。ここで気になるのは、欧米の間で早くも足並みの乱れが生じはじめていることだ。EU諸国はロシアとの経済的相互依存の関係が強い。中でもドイツは、ロシアとの取引をしている企業が7000社近くあるという。また同国の天然ガス輸入の3分の1はロシアからという。「本気で制裁」となれば、ドイツ経済は確実に打撃を受ける。
もう一つ気になるのは、今回の対立が長期化して、新たな「東西冷戦」がはじまるのではないかとの懸念である。この夏ソチで開催予定の先進主要国サミット(G8)は開けなくなる公算が大きい。しかし、ここは、多少の犠牲を払っても、「国際秩序を力ずくで変えようとする行為は許さない」との明確なメッセージを、国際社会はロシアに送り続けなければいけない。いまが我慢のしどころである。
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