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2014-04-01 00:00
(連載1)ロシアによるクリミア併合と日本の対露政策
袴田 茂樹
日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
ロシアによるクリミア併合に関して、日本として如何に対応すべきか、という問題について、私見を述べたい。まず、住民投票によるクリミアのロシアへの併合が国際法違反であることを説明する。クリミア地域の住民の「民主的方法」による併合は、正当なのか。じつは、たとえ地方政権が外国の介入や圧力なしに完全に民主的方法で住民投票を実行したとしても、ある国の1地域が中央政府の承認なしに独立とか他国への併合という主権事項を決めることはできない。これは国際法の基本である。
したがって、わが国で言われたいわゆる「地域主権」なる概念は、主権国家内に別の主権を認めることで、論理的にナンセンスであり、民主主義の履き違えだ。次の例を考えれば、その間違いは明瞭だろう。各国には中国系住民の多いチャイナ・タウンがある。では、住民投票でその町を独立国とか中国領にすることは可能か。それが出来ないことは自明だ。例外は、大量虐殺など非人道的行為が行われていることが国際機関で認められた場合で、それがセルビアのコソボの例である。プーチン大統領は、クリミアのケースはコソボの例とまったく同じだと主張し、西側はダブルスタンダードだと批判したが、これは明らかにプーチン大統領の間違いだ。
NATO拡大やミサイル防衛システム(MDS)の欧州配備問題で、プーチンやロシア人が欧米から騙されたという強い不信感や被害者意識を抱いているのは事実だが、だからと言って、それに対してロシア側の言い分に一定の理解を示すとしても、そのことは国際法に対する今回の明らかな侵害とは別の次元の問題である。
プーチン及びロシアのウクライナに対する行動は、「21世紀には、少なくとも先進国や大国間においては、軍事力を背景に他国の領土を奪うということなどあり得ない」と楽天的に信じていた世界の政治家や国際政治の専門家、多くの人々に強烈なショックを与えた。筆者は、「主権や領土をめぐる国家間の対立や紛争は、もはや過去のものというポスト・モダニズムの考えは楽天的にすぎる。今日の国際情勢は、2つの世界大戦を経験した20世紀前半の状況に酷似している」と述べてきた。また「国際秩序は国際法のみで保たれているわけではない」とも述べてきた。しかしこの筆者にとっても、今回のクリミア事件は大きなショックであった。(つづく)
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