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2014-04-03 00:00
(連載3)ロシアによるクリミア併合と日本の対露政策
袴田 茂樹
日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
日本の対露政策が、G7の他の国の対露政策にただ同調し追随しているだけ、という印象を与えてはならない。実際にはこれはきわめてデリケートな政策となるが、まさにこのデリケートな事態に対応するのが、外交というものである。
安倍首相はプーチンと個人的な信頼関係を構築してきた。そして、プーチンは秋に訪日する可能性があるとも言われている。日本がG7の対露政策に追随したなら、北方領土交渉を進展させる絶好のチャンスを潰してしまう、という見解がわが国にはある。この前提となっているのは、プーチンは北方領土問題で何らかの譲歩を念頭に置いている、あるいは、日ソ共同宣言を超えて、国後、択捉の交渉も真剣に考えている、という考えだ。はっきり言うが、これは幻想である。
ロシアではプーチンの支持率は近年低下し、大規模な反プーチン・デモなども起きる状況になっていた。プーチンの政治基盤は大国主義的ナショナリズムであり、「クリミアの併合」によってロシアにおいては熱狂的なプーチン支持の雰囲気が高まった。ナショナリズムの心理を大いに満足させたからである。このような状況下で、プーチンが北方領土問題で譲歩することはあり得ない。クリミア事件が示していることは、主権問題の厳しさであり、またロシアと友好関係を強めれば、北方領土問題でプーチンが譲歩するという考えの甘さである。
日本では、北方領土問題で「ヒキワケ」という言葉も使ったプーチンに対する期待値は高い。つまり、プーチンにとって日本は、実は訪問しにくい国なのだ。ロシアは、ウクライナ問題での日本の対応を、例えば4月の岸田外相の訪露や今年中のプーチンの訪日を延期する絶好の口実にするかもしれない。日本としては、そのことも当然覚悟しておくべきだ。ソチG8首脳会議中止の流れの中で、「プーチン訪日中止」の脅しに屈して、日本だけが単独で外相会談をすれば、日本の決意と姿勢は国際社会で疑われ、顰蹙を買うだろう。なお、3月30日に米露両国が第3国(パリ)で外相会談を行ったが、これはクリミア事件を問題とし、もっぱらそのことを議論するために行う会談だった。もし岸田外相がクリミア事件の前から予定されていた外相会談を予定通り4月に訪露して行うなら、それが意味することは、逆に「クリミア事件を問題としない」ということだ。たとえ付随的に触れたとしてでもある。(おわり)
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