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2014-04-03 00:00
(連載1)アフガニスタンとアメリカの二国間安全保障合意の行方
河村 洋
外交評論家
今年はアフガニスタンにとってきわめて重要な年である。ハミド・カルザイ大統領が二国間安全保障合意(BSA)の締結をめぐってオバマ政権に厳しい姿勢で臨む一方で、4月5日には大統領選挙が行われる。NATO軍は今年の終了を前に撤退するが、アフガニスタンの治安部隊がテロとの戦いを乗り切るにはアメリカの大幅な支援が必要である。早期の合意締結が望まれているが、カルザイ氏はBSAの条件に難色を示している。カルザイ氏が憲法によって大統領への再選が禁じられているという状況では、2014年以降のアフガニスタンの治安と安定で次期大統領が担う役割は無視できない。
まずBSAについて簡単に述べ、そしてロヤ・ジルガがBSAを承認したにもかかわらず、なお交渉手続に不満を述べるカルザイ氏の真意は何なのかを検証したい。BSAは、「アフガニスタンとアメリカの間の持続的な戦略パートナーシップ合意」(Enduring Strategic Partnership Agreement between the Islamic Republic of Afghanistan and the United States of America)の一部である。この合意は、両国関係の長期的な枠組みとして2012年7月4日に発効した。「戦略パートナーシップ合意」の下では、アメリカが開発援助を供与し、教育、医療保険、地域協力などの社会経済改革のために統治の助言を行なうとされている。しかし2014年の兵員削減後の米軍の地位やアフガニスタンにおける米軍の長期的なプレゼンスは、この「戦略パートナーシップ合意」では述べられてない。よって、アメリカとアフガニスタンは2012年11月15日にBSA交渉を始めた。アメリカとアフガニスタンの両国とも「アメリカはアフガニスタンの主権を尊重し、アフガニスタンの隣国に脅威となるような米軍の恒久的な軍事的プレゼンスは要求しない」ことを強調した。兵員は削減されるものの、米軍は依然として活発なテロリストや反乱分子との戦闘を続けるアフガニスタン治安部隊を支援するものとされている。
BSAの重要な争点は「アメリカ軍が自国兵を自らの軍事法廷で裁ける」と記された第13条である。ロヤ・ジルガは昨年11月21日にこの条項を承認しているが、カルザイ氏はこれを覆したばかりか、11月末のカーブルでのスーザン・ライス国家安全保障担当補佐官との会談では新たな条件を突きつけた。米軍の地位に関する法案がロヤ・ジルガを通過した11月21日に、カルザイ氏はそれに対する疑念を述べた。BSAは相互の承認なしに米軍が戦闘行為に出ることを制限しているが、カルザイ氏はさらに米軍の駐留期限を10年に区切るように要求している。
ロヤ・ジルガの議員達はカルザイ氏の演説に驚愕し、チャック・ヘーゲル国防長官はゼロ・オプションまで示してカルザイ氏に合意への早急な調印を促した。アメリカは2014年以降も訓練と対テロ作戦のためアフガニスタンに8千から1万人規模の兵員を駐留させ、「米兵が充分整備されていないアフガニスタンの刑法の処罰を受けぬように」と要求している。カルザイ氏が議会の承認を覆したことは、アメリカの政策形成者の間で困惑されている。カルザイ氏は治安管理と意思決定がアメリカに有利になっていると不満を述べているが、前ISAF司令官のジョン・アレン海兵隊大将は「アメリカがこれまで積み上げてきた犠牲とアフガニスタンの将来の治安のためにも、カルザイ氏に過大な意思決定能力を与えぬように」と主張している。(つづく)
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