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2014-04-05 00:00
(連載3)アフガニスタンとアメリカの二国間安全保障合意の行方
河村 洋
外交評論家
BSAに対するカルザイ氏のアプローチは非常に危険である。アフガニスタンの外交官で同国科学アカデミー正会員でもあるアフマド・シャー・カタワザイ氏はカーマ通信への1月7日付けの投稿で「ゼロ・オプションという事態になれば中央アジアでジハード主義者やアル・カイダの動きが活発化し、アフガニスタンはイラクのような混乱に陥る」と警告している。ロヤ・ジルガ議員も、アフガニスタン国民も、BSAがどれほど重要かを理解している。カタワザイ氏は「米軍が撤退すれば、アフガニスタンの復興に全力で取り組んでいる改革派にとっては、心理的に大打撃となるだろう」と主張している。
昨年9月にはダンフォード大将が「米軍はアフガニスタン治安部隊の戦闘能力向上を支援するとともに、アフガニスタンへの無関心は関与よりも高い代価として跳ね返る」と明言した。非常に困惑させらせることに、カルザイ氏はただBSAで米軍の行動への規制を強めるために、空爆による事故被害について、虚偽の事件を捏造しているという情報もある。ブッシュ政権期のスティーブン・ハドレー元国家安全保障担当補佐官は、カルザイ氏による遅延を乗り切るために3つの方策を提言している。それは「第一に、アメリカは両国の合意では米軍は必要不可欠な夜襲に集中することを再確認し、自らは社会経済改革と和平交渉を後押しして、カルザイ氏の面目を保つべきである。第二に、オバマ政権はアフガニスタンに駐留する米軍の正確な規模を明言し、2014年以降の米軍のプレゼンスを保証すべきである。これによってNATO同盟諸国も同様な手段をとれる。最後に、オバマ政権は合意への署名の意志を明言すべきであるが、選挙前にアフガニスタン側もそうするように圧力をかけるべきではない」ということである。また、「ゼロ・オプションなど口にするだけでも相互信頼を損ない、核兵器を保有する隣国パキスタンの不安定化につながる」と指摘している。
来る選挙では特定案件の政策よりも、カルザイ氏の影響力と民族間のバランスが結果を大きく左右する。アフガニスタンのATRコンサルティングが最近行った世論調査によると、アシュラフ・ガニ氏が首位を走り、アブドラ・アブドラ氏と他の候補者がこれに続いている。パシュトゥン人のガニ氏はウズベク人のラシッド・ドスタム将軍と組み、タジク人のアブドラ氏はイスラム主義者のモハマド・カーン氏およびハザラ人のモハマド・モハケク氏と組んで、選挙を戦っている。
しかし、アフガニスタンの政治アナリストのヘレナ・マリクヤール氏は3月3日付けのアル・ジャジーラへの寄稿で「民族構成とともに、物質主義の影響も大きい。支持者達は候補者に金品や政府での官職を要求している」と指摘する。上位の両候補ともBSAの重要性と、それに代わる代替案などないことも理解している。ガニ氏は元世界銀行のエコノミストであり、アブドラ氏は外相を歴任した。いずれにせよ、BSAはロヤ・ジルガで承認されている。両候補ともハミド・カルザイ大統領の下で働いた経験がある。選挙後にカルザイ大統領はどのような影響力を行使するのだろうか?それが注目されている。(おわり)
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