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2014-04-14 00:00
同盟強化に欠かせぬ集団的自衛権
鍋嶋 敬三
評論家
世界は今、第2次大戦後の国際秩序が崩れる危険に直面し、欧州、アジア、中東を問わず情勢の不安定化が急速に進行している。米ソ両核超大国が世界秩序を押さえていた時代が一転、米国の相対的地位の低下による多極化、凋落したロシアのプーチン大統領による「失地回復」の逆襲、経済大国中国の軍事的拡張主義が脅威の震源になり、中東も大混乱に陥った。日本は日米安全保障条約の防波堤で60年間、自らの安全を維持することができた。国際情勢の地殻変動に直面する現在、その歴史的事実を無視して日本の将来は語り得ない。
ウクライナ危機でもG7(先進7カ国)で唯一アジアの先進国としてクリミア併合のロシアを非難する国際的な発言力を持てるのも、このような基盤があるからに他ならない。日本がさらに発言力を強めるためには、国民負担増という犠牲を自ら払いつつ経済力を回復するとともに、外部からの脅威を跳ね返すため、安全保障上の欠陥を着実に是正して日米安保同盟を強化しなければならない。中国の急速な軍備増強、海洋支配の動きに対しては、日本だけでなく東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国も、中国を意識して大きな声では言わないものの、米国の軍事的、経済的存在こそが「最後の砦(とりで)」と頼みにしている。
米国にとっても日本との同盟関係がそれを担保する最大のよりどころである。民主、共和党を問わず、米国の歴代政権が日米安保体制を「アジア太平洋地域の要石」と公言してきたゆえんだ。ラッセル米国務次官補は言う。「堅固で強まる日米の結束なしには(アジア太平洋地域の再均衡という)オバマ大統領の目標は達成できない」と。これは本音である。ヘーゲル国防長官が大統領のアジア歴訪(4月下旬)に先立って上旬にハワイで米国が初主催するASEANとの国防相会議を開き、中国訪問を挟んで日本とモンゴルを訪れて防衛協力の強化を確認したのはこのような戦略的意図に基づく。
米中国防相会談(4月8日、北京)後の記者会見でヘーゲル長官は東シナ海、南シナ海で中国の脅威にさらされている「日本、フィリピンとの安保条約の義務を完全に守る」と明言した。さらに日本の集団的自衛権の行使について「自衛について憲法解釈を再検討することは正しい。日本国民が決めることだが、米国は再検討を支持する」「日本は米国や中国と同じ大国であり、自らの安全保障を確実にするだけでなく、地域や世界におけるより大きな役割を果たす責任がある」と語った。これまでにない集団的自衛権に関する米国の明確なメッセージだ。核・弾道ミサイルの脅威が目の前にあり、宇宙兵器、サイバー攻撃など3次元の世界への対応が現実の課題になっている今日の国際安全保障情勢は、「個別的自衛権だけで対処できる」ほど甘くはない。集団的自衛権の行使を可能にすることは、日米安保同盟の発展に欠かせないだけでなく、対米外交上日本が切ることのできる大きなカードになり得るのである。
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