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2014-04-16 00:00
再び砂川判決を考える
角田 勝彦
団体役員、元大使
報道によれば、5月連休明けにも予定される安保法制懇の報告書提出を受けて、政府は砂川判決(とくに他国防衛に関する自国の義務を明示している田中耕太郎最高裁長官《当時》の補足意見)を引用した「政府方針」を作成し、公明党などの説得に努める方針の由である。「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利」とする法制局型集団的自衛権の行使容認が、憲法解釈上可能であるとあらためて説得しようというのである。
国際情勢の変化から行使容認が政治的または軍事的に不可欠になったことなどを強調する(たとえば、4月14日付本欄への鍋嶋敬三氏寄稿「同盟強化に欠かせぬ集団的自衛権」)のではなく、従来は空理空論、神学論争と蔑視していた法の面からの説得に力点を置くのなら、結構なことである。4月13日付本欄への船田元氏寄稿「憲法改正に向けての環境、整備される」の進展を踏まえ、憲法改正の中身の議論を行うことにもつながろう。
砂川判決は、4月10日付拙稿で論じた通り、「国連型集団的自衛権(=同盟締結権)」を認め、 日米安保条約及び駐留米軍を合憲としている。「憲法第9条は、我が国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではない」との明示的判決である。もちろん、日米安保条約は我が国が基地を提供し、米国が我が国を防衛するとの片務条約である。我が国も米国を防衛する義務を負う双務条約ではない。我が国の防衛力の不備は自明の前提だった。法制局型集団的自衛権(要するに「海外出兵権」と呼べよう)は考えられていなかった。田中耕太郎最高裁長官(当時)は、判決補足意見で、判決を「正当」としつつ、自衛はすなわち「他衛」、他衛はすなわち「自衛」という関係があるとして、国際共同体に対する義務が存在することを指摘している。これは国連の集団安全保障体制への参加を示唆したものと考えられる。安保法制懇は、その報告でPKOにも触れる由であるが、これは集団的自衛権、すなわち同盟とは別の問題である。
海外出兵は憲法第9条という鉄壁の向こう側にある。これを可能とする法律は「一見極めて明白に違憲無効」(砂川判決)として裁判所の司法審査権の対象とされよう。国論の分裂と混乱を賭けて解釈改憲に突き進む愚は避けることを信じたい。
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