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2014-04-25 00:00
日米首脳会談の成果をどう生かすか
鍋嶋 敬三
評論家
オバマ米大統領が安倍晋三首相との会談(4月24日)で「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用対象になる」と米国の大統領として初めて明言した。大統領は「何も新しい立場ではない」と断ったが、中国から執拗(しつよう)に領海、領空侵犯の主権侵害にさらされている現状での発言は重い。首脳会談の大きな成果である。中国は直ちに外務省報道官が「断固反対する。中国の領土主権を損なうべきではない」と反発した。歴史的に日本領土であることが明白な尖閣諸島を中国領だとする手前勝手な主張は認められない。大統領自身の発言は国際社会への発信力において決定的な意味を持つのである。
安倍、オバマ両首脳は中国の「力による現状変更の動きに対し明確に反対し」、対中国政策について「緊密な連携を確認した」(安倍首相)。中国の防空識別圏(ADIZ)設定の際に見られたような日米間の対中認識のギャップを防ぐ上で重要な合意である。集団的自衛権の行使容認の問題についても大統領から安倍首相の姿勢に対し「歓迎、支持」の明確な意思表示があり、首相への追い風となった。米国の拡大抑止力強化にもプラスになる。今回のオバマ・アジア歴訪は同盟国の日本と韓国へ、さらに南シナ海で中国と領有権紛争を抱えるマレーシア、フィリピンが対象であり、日米安保合意はアジア全体の情勢に影響を及ぼすだろう。
日本としては、オバマ政権のアジア太平洋リバランス(再均衡)戦略を後押しすることが同盟国として果たす大きな役割になる。在日米軍再編のための沖縄海兵隊の一部グアム移駐、普天間飛行場の移設推進などを着実に進めなければ、再編の実は挙がらない。同盟強化の大きな柱は、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しである。1997年の新指針から17年。日本の安全を確保するため、朝鮮半島、中国を中心にしたアジア情勢の激変に対応することは喫緊の課題である。ガイドライン改定のために集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を遅滞なく進めなければならない。
難航している環太平洋連携協定(TPP)交渉では妥結に向けた首脳による劇的な打開ができず、首脳会談直後の共同声明発表が先送りになる異例の展開になった。日米とも極めて強い政治力を持つ圧力団体を背景に、どちらにとっても譲歩は政治的賭けだ。11月に中間選挙を控えたオバマ政権にとって決着は時間の経過とともに困難になる。だが、「安保と経済」は同盟という車の両輪である。安倍首相は日米関係を「戦略的利益を共有するグローバルなパートナー」と位置付け、アジア太平洋の平和と繁栄のため「日米同盟の主導的役割を確認した」と胸を張ったが、TPPの合意こそ両首脳に課せられた重い責任だったはずである。
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