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2014-05-05 00:00
(連載1)集団的自衛権をめぐる議論に関して
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
憲法記念日前後に、テレビや新聞などの憲法議論や集団的自衛権行使容認議論を見聞きしたところ、護憲派を称する学者、マスコミ、リベラルと称するいわゆる左派系の人々はもちろん、自民党内の反対派や公明党を含めて、慎重派や安倍政権抵抗派の人々の意見には、「とにかく安倍内閣には反対したい」という意図があるのはよくわかりました。しかし、その議論の論点は飛び散り、論理的に理解しがたい点がいくつか見られたので指摘します。
その第一は、日本防衛について個別的自衛権のみによる単独防衛主義を主張する方々は「戦前の日本に戻れ」と言っているように聞こえます。何故、単独孤立主義を主張するのでしょうか。戦前「国際連盟の言うことが気に入らない」と言って、松岡外相は国際連盟の席をけって脱退し、日本の友好国が他にどこにもいないためファシズムのナチス政権と同盟を結んで、日本を戦争突入への道に向かわせました。近衛首相は「蒋介石政権を相手にせず」と言って、当時の中華民国には欧米連合国が味方に付いていたにもかかわらず、日本は戦争を仕掛けました。当時、日本を支持する国は、ヒットラーのドイツとムッソリーニのイタリア以外に一国も無かったことを忘れてはいけません。互いに集団的自衛権を行使して助け合う世界中の連合国のすべてを敵に回して、どこの国から攻撃されたわけでもないのに、孤立した日本は馬鹿げた戦争に自ら突入しました。
日本は、スターリンとの間で日ソ中立条約を結びましたが、ナチス敗戦を確信したスターリンから勝手に破棄され、散々な目にあいました。しかしその間違いの根本は、当時の日本には他国と協調して国を守るという心が欠けていたことにあります。何故今、公明党までもが昔のような単独防衛主義、個別自衛権主義を主張するのか、理解できません。せっかく米国中心とする旧連合国が、戦後70年の平和国家日本を評価してくれて、その集団自衛権行使を容認し、支持、歓迎してくれているのに、それを受け入れないというのでは、世界の自由民主国家からは歴史の反省を忘れた危険な国とみなされる恐れすらあります。
第二に、「地球の裏側まで戦争に行く」「安倍首相は日本を戦争の出来る国にしようとしている」などという暴論を言う方々は、国を守るための議論を、他国に戦争を仕掛ける戦争議論にすり替えています。国家の自衛や国防に反対する人々がいるのは、理解しがたいことです。それらの方々は「国破れて山河あり」「兵どもの夢の跡」といったペンペン草のはえた未来の日本の国土の姿を望むのでしょうか? 今、議論しているのは、国の安全保障であり、国家の防衛、自衛権の問題であります。他国を攻めに行くための集団的「攻撃権」などのことは、誰も考えていません。中には「憲法第9条の精神に反する」という人もいますが、現憲法は米国の占領下に制定された憲法であり、もう一度米国に占領してもらえば、確かに日本は軍事力も自衛権も必要ありません。しかし、今の日本は独立国であり、独立国の自衛や防衛を否定する憲法は世界にありません。現行日本国憲法も自衛権までは否定していないという解釈が成り立っている所以です。(つづく)
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