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2014-05-25 00:00
マスコミの食い物にされている集団的自衛権論議
河東 哲夫
元外交官
集団的自衛権がすっかりマスコミの餌食になっている。半年ほど前、特定秘密保護法とやらが世界の終りででもあるかのように扱われていたが、今では誰が覚えているだろう。それが終わると、今度はマスコミはTPPに飛びかかり、これがあたかもアメリカの陰謀で、押し付けられたら日本は皮しか残らないようなことを言う。TPPの結論は出ていないのに、今度は集団的自衛権だ。憲法の解釈を変更したら(現在の解釈こそ、随分ひん曲がったもののように見えるが)、日本は地球の果てまでも米軍に引きずられて戦いに行かねばならなくなる、のだそうだ。
しかし、日米安保条約を読むと、「地球の果てまでも」とはどうしても読めない。集団的自衛権が関係してくるのはその第5条だが、同条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危機に対処するように行動する」と述べているにすぎず、「日本国の施政の下にある領域」だけが適用の対象となる。もし今の集団的自衛権論議ではっきりしていない定義があるのであれば、それを限定すればよい。
軍事技術が進む現代、米軍とは協力しようと思っても、技術的に難しいケースが増えてきた。米軍は高度にIT化されているので、そのネットワークにすぐ飛び込むわけにいかないからだ。そして、米軍はどんどん「アウトソーシング」化(要するに傭兵の多用化)を進めてもいる。そして無人飛行機が多用されている。そのうちにはロボット兵士も登場してくる(アフガニスタンではロボット駄馬が活躍しようとている)。そうなると、米国の軍事行動に対しては、資金を供出するだけで感謝される時代が来るかもしれない。
日本の施政権内の地域・海域・空域で日本を守って行動している米軍を、横で作戦している自衛隊が守ることもできない。この点を直すための集団的自衛権行使是認なら僕は賛成だ。それさえできない国家は、そもそも米国に平等性を求める資格はないのだ。法制局は、自衛隊が海外にまで引っ張り出されることを防ぐために、硬い解釈を堅持してきたのではないのか? それが独り歩きして、今や政局にも利用されている。そういう構図に見える。
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