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2014-05-26 00:00
国際秩序への挑戦者は誰か?
鍋嶋 敬三
評論家
中国とロシアによる国際秩序への挑戦がますますあらわになり、しかも連携を強めてきた。中露が対抗する相手は米国であり、国際的規範を行動原理とする国際社会である。中国は尖閣諸島を含む独自の防空識別圏を一方的に設定、東シナ海、南シナ海への進出でアジア太平洋地域の緊張を著しく高めた。ロシアはクリミア半島を腕ずくで併合したウクライナ危機の主役である。中露首脳会談(5月20日)では「戦後の世界秩序を損なう試みに断固反対」し、両国の戦略的協力関係が「新たな段階に入った」とする共同声明を発表した。冷戦終了後、大国関係で一応の安定期にあった国際秩序に挑戦しているのは他ならぬ中国とロシアではないのか。
超大国アメリカの「一極支配」が終わりを告げ、抑止力の低下がその背景にある。既得権益勢力とナショナリズムに立脚する中露指導部の本質についてオバマ政権の読み違えもあるのではないか。硬直した外交路線を走る中国に対する米国の「宥和政策」は失敗に終わり、米中関係は「協調」から「対立」へ軸足を移した。中国外交の二重基準は今に始まったことではない。既得権益を守るためには、国連安全保障理事会の常任理事国として「世界秩序の守護者」の顔を見せる。一方、習近平政権が掲げる「中華民族の偉大な復興」の夢の実現、つまりは「失地回復」のために米国主導の国際秩序を障害として無視する。尖閣諸島や南シナ海での一方的な行動はその具体例である。ロシアもソ連邦崩壊後、米欧から正当な扱いを受けていないといら立ちを募らせてきた。プーチン大統領は5月24日、世界の主要通信社との会見で国際問題で西側の脇役に甘んじるつもりのないことを強調した。
米議会では中国が近隣諸国を力ずくでねじ伏せる強権的なやり方に強い批判が出てきた。下院外交委員会のアジア太平洋小委員会(5月20日)で民主党のベラ議員は「米国が中国を国際規範に則った外交路線に戻せなければ、中国は同じパターンを繰り返す」と、与党ながら政府を追及した。ラッセル国務次官補が4月のオバマ大統領のアジア歴訪で国際法の原則を固守する決意、同盟国や地域の安定への関与、中国の「平和的発展」を促すオバマ政権のコミットメントを明確にしたことなどを説明、中国の独断的行動に対する国際社会の批判が「疑いもなく、北京の政策決定者の計算に重要な影響を与えている」と答弁した。しかし、これは「甘い」見方ではないか。
その同じ日に出された中露共同声明、翌21日に中国の主宰で開いたアジア信頼醸成措置会議(CICA)の首脳会議で習近平国家主席が「アジアの問題と安全はアジア人が処理する」と米国抜きの「アジア新安全保障観」の提唱を打ち上げた。習主席は「中国は一貫して領土主権や海洋権益の争いを平和的に処理してきた」と言うが、東シナ海や南シナ海における中国公権力の実力行使は「平和的処理」なのか。これは中国がよく使う「黒を白と言いくるめる」類いだろう。中国が国際社会の批判に耳を傾け、自制する姿勢はここからはうかがえない。中露は今後、国際的な批判が高まらないよう戦術的に手控えることがあるとしても、勢力圏拡大のため自国の利益最優先、そのための既成秩序への挑戦という外交路線の本質は変わらないだろう。
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