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2014-07-01 00:00
米国は対中「迷い」を克服できるか
鍋嶋 敬三
評論家
中国を巡る国際関係の調整で最大の柱は米国の対中政策である。中国による防空識別圏(ADIZ)の一方的設定、東シナ海、南シナ海における攻撃的な手法は国際的な批判を浴び、先進7カ国(G7)首脳会議では「力を背景とする一方的な現状変更に反対」という宣言が発表された(6月4日)。オバマ米大統領は「アメリカは常に世界で指導的役割を演じなければならない」と述べた(5月28日陸軍士官学校卒業式での演説)。しかし、オバマ政権の対中国政策の「迷い」が中国の行動を許す素地を作った一因ではないか。
中国は米国との「新型の大国関係」を求めている。米上院外交委員会の米中関係に関する公聴会(6月25日)で証言したラッセル国務次官補が「米国は『新型(new model)』の関係の創出を追求している」と発言した。中国の主張を下敷きにした表現である。もっともその意味するところは同じではない。同氏によれば、中国の言う「新型の関係」はアジア太平洋での中国の勢力範囲の創出と、米国や国際社会が中国の「核心的利益」を尊重するという意味合いだという。これに対して米国の考え方は、世界的な問題についての実際的な協力に限定されたモデルだとする。
しかし、中国はその主張を米国が認めたと勝手に解釈したり、宣伝をする可能性もある。外交委の有力者であるコーカー議員(共和党)はオバマ政権が明確な対中戦略を欠いていることを批判した。南京生まれで中国情勢に精通しているロイ元駐中国大使は米中首脳会談では競争と協力の間で安定的な、持続可能なバランスを取るという戦略目標を設定できたと評価した。しかし、習近平政権は平和的発展とナショナリズムの矛盾、米国も同盟国と中国の対立という矛盾をそれぞれ抱えていることに注意を喚起した。米国にとって「本質的に全く重要でない無人島を巡る日本やフィリピンと中国との領土紛争」と位置付けるロイ氏は「米国の見地からすれば、小さな問題で中国との紛争に引きずり込まれるのは望まない」と突き放した見解を示した。ロイ氏は外交界の重鎮として政府内に強い影響力を持つ。米国の対中政策は同盟関係に深甚な影響を与える。オバマ政権のリバランス(再均衡)政策は米国、中国、アジア諸国との三角関係に及ぶのである。
米中間で協力より競争の局面が強まったとするプリンストン大学のフリードバーグ教授は、同盟国や友邦の不安はオバマ政権が指導的な立場を維持する決意と手段を欠いているためだと批判した。中国の最近の行動については、長期的には米国にとって代わりアジア太平洋における圧倒的な勢力と見なされる地位を獲得する目的のために十分計算されたもので、一時的な戦術的調整はあっても、戦略における基本的変化はないと分析している。同教授はアジアにおける米国の立場が同盟国との関係で成り立っている以上、同盟国とともに軍事的能力を高めることが重要だと主張した。米国がなすべきことは、その影響力を最大限発揮してアジアの同盟国、友邦の安全を保証する決意を行動で示すことだ。それがオバマ大統領の言う「世界を常に指導する」ための最優先課題である。
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