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2007-01-10 00:00
首相は集団自衛権問題で決断力を示せ
田久保忠衛
杏林大学客員教授
安倍内閣の人気がぱっとしない理由はすでに新聞、雑誌、テレビなどで専門家が分析している。一つ一つの理由はなるほどもっともなのだが、これといった決め手となるような説明は得られない。私は安倍首相の「決断力」が問題なのだろうと思う。いくら首相に抱負経綸があっても、短兵急に実現できないことは国民はよく知っている。「村山談話」に首相が反対なのはこれまでの言動で明らかなのだが、ひとたび閣議決定したこの談話をいっぺんに覆すのは容易ではないだろう。仮りに思い切った言動に出ようとしても周辺の人々は慎重論を唱えるに決まっている。「参院選挙に勝つことが当面の目標で、ことさら波風を立てる必要はありません」といった訳知り顔の進言が多いことは想像できる。
それでは、首相の大目標の憲法改正に全力を投球すればいいのか。誰が考えてもそれには時間が要る。それよりも、英断一つで戦後の日本を大きく脱皮できる問題がある。集団自衛権についての従来の法制局による解釈を改めることだ。法制局長官が従わないのならば、独自の人事を断行すればいい。「安倍はやる気だ」との気迫は国民に間違いなく伝わろう。それは人気を上げようなどという低次元の問題ではない。シーファー駐日米大使は、北朝鮮が米国を狙って撃ったミサイルを同盟国である日本が「集団自衛権の行使はできない」ことを口実に拒わったら、日米関係を損ねるとの発言をした。自分が米国民になってものを考えればよくわかろう。日本との同盟関係は遠慮したい、と怒る米国の一般市民がふえたら同盟関係はおしまいだ。
安倍首相は、すぐ隣りの中国が昨年来態度を変えつつあることにはとっくに気付いていると思う。靖国神社問題でガタガタ言わなくなったり、北朝鮮のミサイル連射や核実験実施に際しては努めて国連で日米両国に協力的な動きを示した。戦略と戦術を自在に駆使する国であるから、こちらも軽々しい行動はとれないが、中国の国連平和維持活動(PKO)だけでも冷静に観察しておく必要がある。イスラエルのヒズボラ攻撃後に中国は1,000人のPKOをレバノンに派遣すると発表した。世界11カ所に中国は
1,650人のPKを送ったことになる。日本はわずか50人弱だ。中国は「普通の国」入りを急いでいる。イラクに日本は自衛隊を送ったが、他の諸国の軍隊とは全く異なる法体系に従っているため、攻撃されても対応ができない。
首相はこのほど英独仏ベルギーの欧州4か国を訪れ、その際NATO(北大西洋条約機構)を訪れたり、欧州委員会首脳と会った。日本の戦略的友好の輪を大きく拡げる戦略眼には敬意を表するが、集団自衛権の行使を認めていない「異常な国」が「普通の国」と肩を並べて交際する不自然をどれだけ感じ取ったか。首相の「やる気」は先ず集団自衛権に関する従来の「異常な解釈」を御破算にするところから出発すべきではないか。支持率などはあとからついてくる。
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