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2014-07-08 00:00
(連載1)転換を迫られているアメリカのイラク戦略
河村 洋
外交評論家
オバマ政権は6月初旬に「イラクとシャームのイスラム国」(ISIS)が急速に拡大したのを受けて、2011年のイラクからの完全撤退方針を転換せざるを得なくなった。オバマ大統領と政権閣僚達はイラクに関する戦略的な評価を明らかに誤ったのである。2010年2月11日にラリー・キング氏からインタビューを受けたジョセフ・バイデン副大統領は「イラクは銃撃戦なき安定した民主主義に向かっている」と楽観的に論評していた。しかしクルディスタン地域政府(KRG)は6月のISIS侵攻よりはるか以前に、ISISと現地部族指導者そして旧バース党との間の電報を傍受した結果に基づいて、アメリカとイギリスにイスラム過激派による攻撃を警告していた。さらに重要なことに共和党のジョン・マケイン上院議員やリンゼイ・グラム上院議員らは「2011年以降も米軍の一部を継続駐留させなければ、スンニ派武装勢力が反乱を起こすだろう」と、今日の事態を予測する警告を発していた。
イラク情勢がここまで不安定化した理由を検証してみたい。特に6月18日にアメリカン・エンタープライズ研究所で開催されたジョン・マケイン上院議員とジャック・キーン退役陸軍大将による公開討論に注目したい。それはイラク問題に関しては両人が最も精通し、影響力がある政策形成者だからである。マケイン氏は米軍の一部駐留が継続していれば、反乱分子の台頭を抑制し、マリキ政権が民族および宗派の違いを乗り越えて多様性のある政府となるように導くこともできたと主張した。外交問題評議会のマックス・ブート氏も6月23日付けの『ウィークリー・スタンダード』誌への投稿で「最低でも1万人のアメリカの軍事顧問団が駐留していれば、イラクの治安はより安定し、アメリカがマリキ政権に民族と宗教のバランスがとれた政府にするよう外交的な影響力も行使できただろう」と記している。しかし、オバマ大統領にイラクを第二の日本やドイツにしようとする気などさらさらなかったのは明らかである
アメリカとイラク政府はISISとその同盟勢力をどのようにして押し返せるのだろうか?反乱分子の分断が非常に重要になる。マリキ政権がシーア派に過剰依存しているとあって、ISISはスンニ派アラブ人部族連合のアンサール・アル・イスラム、そして旧バース党と手を結んでいる。アラブ首長国連邦のデルマ研究所のハッサン・ハッサン研究員によると、彼らは必ずしも一枚岩ではないという。戦略的優先事項はバグダッドの防衛とテロリストへの反転攻勢である。イラク領内への快進撃とは裏腹に、バグダッドを攻め落とし、持続的に占拠するのは容易でない。他方でISISはシリアからイラクにかけてイスラム過激派としては史上最大の領土を確立しているので、彼らがここを根拠地にしてヨーロッパやアメリカを直接攻撃できる。
厭戦気運の米国民が地上軍の派遣を承認することは考えられないので、アメリカの選択肢は限られている。しかしキーン氏はアメリカが以下の方法でイラクを支援できると述べている。まず、アメリカの軍事顧問は敵の位置を知り、シリアとイラク北部に関する情報を与えるための諜報活動をイラク連邦政府に提供できる。つぎに、アメリカの軍事顧問はイラク軍によるバグダッド防衛と反乱分子への反撃の計画作成を支援できる。それに加えて、アメリカの特殊部隊は重要な標的とテロ指導者を攻撃して、イラク治安部隊を支援できる。さらに、アメリカの航空作戦は現地語を話す地上の特殊部隊とも連携しなければならない。航空作戦は地上での限定的で目標を絞った攻撃には不可欠だが、キーン氏はアメリカの航空兵力がシーア派の空軍になってはならないと強調した。(つづく)
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