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2014-07-12 00:00
(連載1)日米ガイドラインの今後
角田 勝彦
団体役員、元大使
安倍内閣は、7月1日、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈変更の閣議決定を行い、首相のオセアニア歴訪を含む活発な外交攻勢を開始した。豪州は準同盟国となった。7月11日には小野寺防衛相がワシントンでヘーゲル米国防長官と会談し、閣議決定を説明するとともに、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を年内に改定する方針を改めて確認した。岸田外相は、7月下旬ベトナムへ赴き、閣議決定への理解を要請する由である。軍事面を中心に、膨張志向の中国に自制を促す一連の措置を着々と進めているといえよう。閣議決定の是非は別として、日本外交の方向としては理解できるものである。
問題は、猪突猛進が度を過ぎていることである。例えば閣議決定の内容を実施に移すための十数本の関連法案の改正が来年の通常国会とされるのに、どうして年内に改正内容を先取りしてガイドラインの改定が出来るのだろうか。国会軽視も甚だしいし、無理だろう。閣議決定があっても、改正手続きを踏まないと法律は変らない。まさか憲法に続いて法律も解釈変更で行こうと考えているわけではあるまい。
これまで内政面では、人事権を活用したりして、閣議決定という目標を強行実現してきた。今後の動向によっては元の木阿弥になるかも知れないが、一幕の夢で済む。しかし外交では、それだけでは済まない。トラストミー外交の失敗を振り返るまでもない。安請け合いすることは同盟国の信頼を傷つける恐れがある。急がば回れである。
7月1日の閣議決定は、暴走と見るか英断と見るかは別にして、安倍首相の強い意志に基づくものであった。その明確な指示で、閣議決定に「集団的自衛権」という字句が盛り込まれたとされる。筆者が指摘してきたように、国際法上の集団的自衛権と憲法解釈上の集団的自衛権が区別されたのはひとつの進展だが、本旨は変わらない。公明党などが「現憲法の範囲で自衛の考え方を再整理」したにすぎないとか、1日の記者会見で安倍首相自身が「現行の憲法解釈の基本的考え方は何ら変わることはない」と述べたにかかわらず、新3要件は「他国に対する武力攻撃」を含んでいる。すなわち「(これまで憲法上禁じられてきた)集団的自衛権を明確に認めた点で、今回の閣議決定が憲法解釈の変更を意図したことに疑いはない。安倍内閣後の内閣が、これを破棄乃至無視する可能性も存在する。法律論的には違憲訴訟の問題が生じよう。政府にとりかなり厳しい裁判になろう。(つづく)
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