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2014-07-14 00:00
中国は、「新型大国関係」に自信か?
鍋嶋 敬三
評論家
北京での第6回戦略・経済対話(7月9-10日)の結果、中国は習国家主席が提唱してきた米国との「新型大国関係」の構築に自信を深めたことであろう。中国側は「対話」の使命を米国との「大国関係の創出」(楊国務委員)と定めてきた。ケリー国務長官と楊国務委員は会議終了後の記者会見で「新型大国関係」の内容を「実際面での協力を強化し、相違について建設的な処理をすること」と平仄(ひょうそく)を合わせた。サイバースパイ問題などでの対立は解けず、呉越同舟の感がある。米国は北朝鮮やイランの核問題などで中国の協力が欠かせない。「新型大国関係」は習氏が目指す「中華民族の偉大な復興」の大前提だ。習氏が「対話」終了後、米代表団に「新型大国関係」を作るための「絶対的な決意」と「揺るがぬ努力」を強調したのは、そのことを示唆している。
「対話」の意義について米政府高官は米中間の「調整と協力強化の極めて重要なメカニズム」と位置付け、「幅広い、統合的な対話の持つ価値と力を過小評価すべきでない」と指摘。別の高官は米中関係を大勢の俳優が登場する「壮大なハリウッド映画」に例え、一部を見て全体を判断しないようマスコミの注意を喚起していた。「対話」には外交、安全保障、財政、金融、通商、エネルギーなど広範な重要分野の閣僚のほか、大企業経営者が多数参加、2日間にわたって討議を重ねる政府、経済界挙げての大型会議である。ここで得られた合意や不一致の確認がその後の米中関係を動かす軸になる。
ケリー国務長官が上院議員時代から追求してきた気候変動問題で中国が合意したのは米国の得点であった。しかし、東シナ海や南シナ海で一方的に領土主権を主張する中国は一歩も譲らなかった。楊氏は「米中は主権と領土保全を尊重すべきだ」と語ったが、日本やフィリピン、ベトナムの主張は認めず、自らの主張を力を行使して一方的に押し付けるという二重基準は変わらない。ケリー氏は「主権で特定の主張を押し付ける一方的な行動」を批判したが、楊氏は紛争当事国の片方に「肩入れするな」と米国を強くけん制、東、南シナ海での緊張緩和の道は開けなかった。
オバマ政権の対中政策については米国内で、シリアやウクライナ問題での弱い態度が中国の冒険主義を招き、中国は米国を「張り子の虎」と見ている、との批判がある。ケリー氏は中国代表団を前に祖父が上海生まれと紹介、中国への親密感をアピールした。官僚が注意深く避けてきた「新型大国関係」(a new model of great country relationship)の言葉を何回も使い、習主席の前で「中国を封じ込めない」「オバマ大統領は強い中国を歓迎する」と言明した。習氏は「我が意を得たり」だろう。オバマ大統領がアジア外交で最も力を入れてきたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が11月に中国を議長国として北京で開かれる。11月の中間選挙で与党民主党が上院でも多数派を失えば、オバマ政権はレームダック化し、中国の主導権が強まることは避けられない。米中関係はほどなく転機を迎える。
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