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2014-07-30 00:00
(連載3)集団的自衛権に求められる冷静な議論
河東 哲夫
元外交官
しかし、「米軍は日本を守るが、日本は米国を守らない。それは仕方ないとしても、日本を守ろうとする米軍を自衛隊が守るかどうかさえもはっきりしない」という現状のままでは、日米同盟を維持しにくくなる。自衛隊が単独では尖閣を持ちこたえることさえ覚束ない現状では、米国との同盟は日本にとって本当に不可欠なので、そのためには集団的自衛権くらいは行使できるようにしておくべきだろう。集団的自衛権の行使には、徴兵制を必要とするほどの大兵力はいらない。逆に日米同盟を忌避して「自主防衛」をするのであれば、それは米国も潜在敵国となりえることを意味するので、徴兵制を必要とするような大兵力が必要となるだろう。
7月1日の閣議決定には、三つの柱がある(と自分は思う)。一つは個別自衛権行使の際の「防衛出動」命令の手続き迅速化、一つは「集団的自衛権」、そして三つ目は多国籍軍(国連憲章第51条の定める「集団的自衛権」に基づく)への参加を恒常的に可能とすることである。防衛出動とは、自衛隊が自衛行動に実際に出るためには、総理大臣の「防衛出動」命令を要することを言う。尖閣に「中国漁民」が上陸し、海上保安庁がこれを強制排除しようとして中国官憲との争いになり、中国軍が出動した場合、自衛隊が直ちに応戦しないと、中国に有利な事態が固まってしまう。従って今回の閣議決定では、手続きの迅速化をはかるべきことが謳われているのである。
「集団的自衛権」については、いろいろ整理して考える必要がある。まず、日米安保の地理的範囲は一応「フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている」(昭和35年2月26日政府統一見解」)ということになっている。「(日本を防衛している米軍を自衛隊が護衛する場合は)憲法に違反しない個別的自衛権の範囲内である」と中曽根総理が昭和58年2月5日の衆院予算委で述べているが、7月1日の閣議決定ではこのような自衛隊の行動を法制化すると同時に、日本周辺地域で米国を防衛するために自衛隊ができることも法制化し、明示的に合法化しようというのである。
「集団的自衛権」の一環としては、在外の日本人、あるいは日本の資産がテロ攻撃等を受けた時、当該外国の政府の承諾があれば、自衛隊を派遣できる、つまり自衛隊の海外単独行動ができることも、今回閣議決定には含まれている。その表現ぶりは、「多くの日本人が海外で活躍し、テロなどの緊急事態に巻き込まれる可能性がある中で、当該領域国の受入れ同意がある場合には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする必要がある」となっている。これは、運用如何によっては将来ベトナムやフィリピン、あるいは世界中への自衛隊単独派遣を可能にするもので、歯止めが必要である。但し、軍隊を持っている国で、その使用範囲を細かく規定している国はあまり見たことがないのも確かだし、日本と同じ敗戦国のドイツでさえも、NATOの一員として軍をNATO域外に派遣することにはもう踏み切っているのだが。(つづく)
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