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2014-08-06 00:00
(連載2)問題は、抑止力の不在と意志の欠如
袴田 茂樹
日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
したがってロシアの軍事専門家は、クリミア併合宣言の一月後、プーチンがクリミアへの軍事介入を認めた翌日、「クリミア併合ではロシアの軍事力が決定的な意味を有したが、これに対して米国もNATOも全く無力だった。現在のヨーロッパ的な価値においては、自分や自分の家族、自国の防衛のためでさえも、生命を犠牲にすることは全く想定していない。軍事力強化に全力を投入しているプーチン政策は正しいし、今後もロシアは軍事力強化を最重視すべき」と述べ、ロシアは対ウクライナ政策で事実上フリーハンドを得たと言わんばかりの勝ち誇った言い方をしている(『独立新聞』2014.4.18)。
このロシアの侮辱的な対応に対してさえ、欧米諸国・日本は、国際法侵犯への批判や形だけの「経済制裁」でお茶を濁そうとした。これがロシアやウクライナの親露派を増長させた。したがって、混乱がウクライナ東部へ波及したのは、必然の成り行きであった。ウクライナ東部にロシアが工作員や武器などを送り込んでいるのは公然の秘密であったが、これに対しても欧米諸国はそれを阻止する有効な対応を何もしなかった。自らの直接の対応だけでなく、ウクライナ政府がこのロシアの露骨な主権侵害に効果的に対応するための支援もほとんど行っていない。一方ロシアからは、旅客機撃墜後も、武器や特殊部隊がロシアからウクライナに大量に流入しているという有様だ。100台の車両が隊列を組んでウクライナに入ったとの米報道もある(朝日7.27)。
欧米が強い態度に出ない理由は明白である。まず、オバマ大統領は今になって強い経済制裁を口では言っているが、彼はリアルな国際力学の感覚を有さず、国内政治に力を削がれ、対外政策では「21世紀には伝統的防衛力は意味を失う。紛争は国際機関や国際法を通じて交渉で解決できる」というポストモダニズム的な政治意識に凝り固まっている。ちなみに、ロシア指導部もオバマを、口だけの政治家で、軟弱で無能だと侮っている。
また、ドイツは天然ガスの3分の1をロシアから輸入し、6千社以上の企業がロシアと関係を持ち、それが数十万人の雇用を生んでいるとされる。もちろんメルケルも制裁には慎重である。フランスも、この「戦時下」にありながら、強襲揚陸艦ミストラル2隻を相手国ロシアに売ることの方が、ウクライナの主権侵害を阻止することよりもはるかに重要な関心事なのだ。その軍艦がロシアによって極東や黒海で如何に行使されるかは、フランスにとってどうでも良いことなのである。フランスのミストラル輸出を批判するイギリスのキャメロンも、ロンドンの金融市場でのロシア資金を重視している。(つづく)
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