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2014-08-07 00:00
(連載3)問題は、抑止力の不在と意志の欠如
袴田 茂樹
日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
犠牲者を最も多く出したオランダだが、ロイヤル・ダッチ・シェルはクリミア併合後(4月)もプーチンと積極的に商談をした。今になって同国マスメディアはNATOのウクライナ東部への介入を訴え、政府も派兵を検討していると報じた(読売7.27)。やはり多くの犠牲を出したオーストラリアは、ウクライナ東部に警官100名派遣を決定した。しかし欧州諸国の一般的空気は今でも、自国の「商売大事」で、ウクライナの主権侵害やウクライナ国家の運命は二の次である。
各国が自国の経済や国益を最重要視するのは、そして建前としての国際正義や国際法よりも、自国経済を重視するのも、ある意味では避けられない。それが国際政治の現実だ。政治は綺麗ごとではないし、まず国民生活を保証しないと政権は持たない。欧州国民自身も、他国の国家主権の問題よりも自らの生活の方をはるかに大事にする。ロシアのリアリストも、「国際政治の基礎に存するのは高邁な原理ではなく、大国の国益や地政学、力の均衡などで、国益の追求においては、国際法や道徳規範、歴史論争などは、目的達成のための単なる手段に過ぎない」とシニカルな見解を述べている。西側諸国は平和的交渉で紛争は解決できるという偽善的な態度を捨て、あるいはポストモダニスト的な言説を改め、軍事力強化に邁進しているロシアや中国に対しては、こちらもリアリストとしてその行動を抑止するための有効な措置を真剣に考えるべきだ。
私は冷戦時代の様な軍拡競争を主張しているのではない。クリミア問題への対応に関しては、力による対応もすでに遅すぎるとさえ思っている。2008年のグルジア戦争の後、欧米諸国は南オセチアやアブハジアのロシア保護領化を黙認し、翌年大統領になったオバマは対露関係のリセット(関係改善)を唱えて、ロシアの主権侵害を公然と容認した。クリミア併合やウクライナ東部の混乱も、旅客機撃墜の悲劇も、この流れの必然の結果だ。
私の言いたいことは、ロシアや中国が今後も露骨なパワーポリティクスに走らないよう、欧米諸国も日本も、それを抑止する意志と備えはしっかりすべきだということである。西側がロシア人の心理や論理を知らなかったことも大きな問題だが、単なる対話と相互理解の欠如ではなく、抑止力とそのための意志の欠如こそが今日のウクライナ情勢を(そして南シナ海、東シナ海の状況も)生んでいることを、我々はしっかりと自覚すべきだ。(おわり)
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