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2014-08-22 00:00
日本にカジノはいらない
松井 啓
大学講師、元大使
厚生労働省研究班の調査では国際比較で日本人にはギャンブル依存症が多く、その疑いのある人は536万人と報じられている(8月21日の朝日、日経)。毎朝10時前からパチンコ屋の前に並んでいる青年の列を見ると、哀れにさえ思えるが、高名な政治家や財界人でも海外のラスベガスなどのカジノで大金を失った例もあり、国内でカジノが開帳されれば悲劇は更に多くなるであろう。超党派の「国際観光産業振興議員連盟」はカジノを中心とした統合型リゾート(IR)施設は「観光や地域経済の振興に寄与する」と強調し、その推進法案への賛同を呼びかけ、2020年の東京五輪に間に合わせるべく年内成立を目指している、と報ぜられている。
推進派が言うように、カジノを開くためには建設のための工事人が雇用され、開帳されれば下働きの従業員の職場が増えるであろう。また、カジノを開けば外国人観光客がカネを落とすと期待している人々もいるが、利益は最終的には日本人にではなくラスベガス等のカジノ運営に長けた国際的な企業に流れてしまうだろう。更に、治安悪化や見えない犯罪の増加を危惧する人々も多い。
日本にカジノができれば4兆円の市場規模になるとの見通しもあり、先進国でカジノが無いのは日本だけという人もいるが、カジノが無いからと言ってG7の中で肩身の狭い思いをする必要はない。賭博は日本人の労働倫理に合わない闇の世界のものである。既に競馬、競輪、競艇は認められているが、地域経済全体の振興に本当に役立っているのであろうか。地方の田畑の真ん中に忽然とパチンコ屋が出現し、夜中にネオンで輝いているが、周りの自然の風景とは全く相いれないものである。外国からの観光客はカジノに閉じこもってギャンブルをするためにわざわざ日本に来るのだろうか。カジノを含めた「総合型リゾート施設」を作れば観光客が大幅に増えるのだろうか。カジノ推進派の人々には目先の利益の見通しに目をくらまされることなく、広く国民の意見に耳を傾けて欲しい。
狭い面積で観光資源に乏しいシンガポールやマカオと違って、日本には歴史的伝統的な名所旧跡が沢山あり、季節の変化に富み、地方には美しい里山が広がっている。日本には伝統芸能、工芸品、美味しい食べ物や飲み物も沢山ある。外国人観光客にはカジノに留まるのではなく日本の地方を廻り、各地の人たちに接して「おもてなし」を受けて日本の良さを満喫してもらってはどうだろうか。これにより新規観光客とリピーターが増え、延いては「中からの国際化」にもつながると期待している。
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