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2014-08-25 00:00
朝日は言論人としての責任を果たせ
杉浦 正章
政治評論家
国民に最も信頼されてきた我が国有数の報道機関が、現代史における最大のデマゴーグを認めたにもかかわらず、誰も責任を取ろうとせず、陳謝もしない。従軍慰安婦強制連行の誤報は国際的な影響も大きく、国辱的なスケールである。これを取り消した以上、多くの国民が次の行動を期待したが、朝日首脳はほおかむりを決め込んでいる。言論人として国政や社会に与える影響は甚大なものがあることを当然理解しているはずなのに、何もなかったように普段の報道を続けている。厚顔無恥というか、破廉恥というか、大企業にふさわしくない対応であろう。国会がこれを見過ごすわけがない。秋の臨時国会では最大の論議を呼ぶだろう。政府自民党は根拠の失せた河野談話に代わる政府談話の作成に着手すべきであろう。新談話を作成して次期総選挙の焦点にすべきであろう。
朝日首脳が何を考えているかは、推察するしかないが、もっとも信頼できる現代史家の秦郁彦が、8月19日のBS日テレ「深層NEWS」で極めて興味深い朝日首脳とのやりとりを披露している。その内容を検証すれば、取り消し報道の是非について社内で議論があり、よほど対応に苦慮したに違いない事が分かる。朝日は8月5、6日の見解表明の「2、3日前」(秦)に、社外の人物である秦に報道の案文を見せて「どうか」と尋ねている。報道機関が報道の内容を事前に第3者に見せて相談するなどと言うことは前代未聞であり、あり得ないことをあえてしたのだ。秦は「やらないよりは良いだろう」と評価しながらも、長文の記事の核心部分を突いた。「誤報を認めながら謝罪をしていない。なぜだという声が必ず出る。考えた方がよい」と述べたのだ。しかし、朝日はこの忠告を無視して、謝罪はせぬまま済州島での強制連行を誤報と認めて取り消し、女子挺身隊と慰安婦の混同を「当時は研究が乏しかった」と言い訳にならぬ弁明の記事を掲載したのだ。
この時点をあえて選んで、朝日が記事取り消しを断行した理由は最大の疑問だが、秦は「どういう意図かはトップあたりの判断だろう」と述べている。トップがなぜ判断したかであるが、報道に携わった者として推察すれば、第一に記事の整合性がとれなくなってきたことであろう。記者は社の方針に沿って記事を書くように自ずと義務付けられており、強制連行にも言及せざるを得ない場面が随所に生じて来る。希代の虚報作家・吉田清治の創作の「済州島における強制連行」の根本を否定しておかないと、誤報の上塗りを重ねることになる。おそらく編集局内部から「誤報と認めるしかない」という声も強まったのであろう。その声が飽和状態となって、噴出しかねない状況になった可能性がある。記者にも良心があり、「記事が書けない」と訴えた可能性も否定出来ない。トップとしては応ぜざるを得ない状況となったのだ。古典落語の「蝦蟇の油」(がまのあぶら)にあるように、四六(しろく)の蝦蟇が己(おのれ)の姿が鏡に映るのを見て驚き、たらーり、たらりと脂汗を流す状態となったのだ。
時期を8月としたのはさすがにプロだ。「反響被害」を最小限に抑えるには、お盆の前に報道するに限る。政界も、政治記者も、夏休みに入り、動きが出にくい時期であるからだ。広島の集中豪雨による土砂災害も重なって、朝日の誤報は紙面やテレビからほとんど消えた。表面上は思惑が図に当たった結果となる。しかし、朝日首脳がこれで済むと判断したとすれば、甘い。自民党は“宿敵”朝日の戦後最大の窮地を見逃すわけがない。夏休み中の8月21日に政調会議を開催、あえて論議を燃え上がらせた。その結果、慰安婦募集の強制性を認めた河野談話に代わる新たな政府談話を出すよう政府に要請することになった。政府は既に河野談話の「継承」を表明しているが、河野談話は宮沢政権が朝日の報道をもとに政治的妥協として作った性格が大きく、政府としても根拠の崩壊を認めざるを得まい。従って「継承」を言いながら、別の談話で事実上の見直しをするわけだ。首相・安倍晋三もかつて新談話をほのめかしたことがあり、本心は新談話であるはずだ。
自民党は談話を作成する時期を来年としているが、来年は戦後70年となるうえに、日韓国交50周年という節目の年である。歴史問題での中韓の反日共闘に対処するには絶好の材料となる。加えて、朝日の大誤報は全国津々浦々まで国民の“激昂”を誘発しており、これを維持・発展させれば願ってもない選挙対策となる。新政府談話を争点とする総選挙または再来年の衆参同日選挙は、自民党政権にとって「圧勝」を保証し得るものであるのだ。したがって自民党は長いスパンで最初のおいしさを持続させる必要がある。朝日の大誤報は、朝日が謝罪もしなければ、責任も取らない態度を続ければ続けるほど、自民党にとって好材料となるのだ。その手始めとなるのが秋の臨時国会における強制連行論議となることは言うまでもない。言論の自由は守られなければならないのは当然だが、32年間にわたって国をおとしめた誤報の再発を防ぐことは、言論抑圧とは別次元の問題である。言論の府が取り上げなくて、誰が取り上げるだろうか。まずは朝日幹部を国会に招致して事情を聞くべきだ。
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