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2014-09-03 00:00
(連載2)「プーチンの訪日」にどう対応すべきか
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
このような侮辱を受けながら、日本がプーチンを招待するならば、その行為が世界に発するメッセージは明白だ。日本はきわめて弱い立場にあり、ロシアの主権侵害について、すなわち北方領土やクリミア問題に対しても真剣勝負では対応していない、ということである。主権侵害問題に対する日本の無原則な態度が他国に及ぼす影響は深刻である。2012年7月3日にメドベジェフ首相が北方領土を訪問して日本を侮辱した。にもかかわらずそのすぐ後の7月28日に、民主党政権の玄葉外相は予定を変えずに訪露して日露外相会談を行った。それを注視していたのが、韓国の李明博大統領だ。彼が竹島を訪問したのは、その直後の8月10日であり、それが日韓関係悪化のターニング・ポイントになった。さらに中国は翌月9月11日に、尖閣を国有化した日本に対して、激しい反日行動を起こした。主権侵害問題に対する日本の優柔不断の態度が、このような状況を誘発したと言える。
プーチンが訪日しても、わが国に求められるのは主として経済・技術協力で、平和条約問題が解決する可能性はほとんどない。軍事力を背景にクリミアを併合したプーチンに対して、ロシアでは「失った領土を取り戻した」として、大国主義的ナショナリズムが爆発的に高揚し、プーチン・フィーバーの状況にある。常識的に考えれば、この状況で、領土問題で日本に譲歩することはあり得ない。また、大国主義的ナショナリズムに支えら得ているプーチンは、国民の心理を逆なでしながら領土問題で日本に譲歩するだけの力もない。今年5月23日にプーチンは、歯舞、色丹の小さな2島の返還さえ否定する発言をしている。プーチンが領土問題で日本に譲歩するとの期待は、まったくの幻想である。
結論。ラブロフは、ウクライナ問題も北方領土での軍事演習も関係なく、日本は秋にプーチンを歓迎せよと言う。「からかい」とも見えるが、日本もナメられたものだ。ウクライナ問題の発生前に合意したプーチン訪日を、各国の対露制裁の最中に何事もなかったかの如く予定通り実施することは、外交常識では通常あり得ない。もし実行すれば、世界は日本外交を侮蔑と不信の目で見、中国には完全に間違ったメッセージを発することになる。プーチン訪日が実現しなかったなら、わが国の一部のマスコミ、政治家、評論家は、「領土問題解決の絶好のチャンスを逃した」とでも言って、日本政府の対露政策を批判でもするつもりなのだろうか。しかし、その前提となっているのは、何の根拠もない間違った「プーチン幻想」である。
ただ、プーチン訪日に関するラブロフ発言は、「揺さぶり」作戦と見ることもできる。現実には、大統領訪日の準備のための外相会談、次官級会談などの予定もまだないし、ロシア側が具体的な訪日日程について日本に打診している気配もない。つまりラブロフ発言は、ウクライナ紛争の最中、プーチンの今秋の訪日が現実的でなくなった今、訪日中止の責任を日本に負わせるシニカルな戦術と言える。これについては菅官房長官の言う如く、慌てず騒がず、日本の国益の観点から、じっくり総合的に考慮すればよいのだ。(おわり)
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