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2007-01-18 00:00
出直し迫られる安保理改革――無責任なボルトン発言
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
1月17日付の読売新聞(朝刊)によると、来日中のボルトン前米国連大使が東大で講演し、「日本はむしろ単独で国連安保理常任理入りを目指した方が実現のチャンスがあった」と述べたという。無責任きわまる発言である。国連大使をいやしくも2年間務めた米外交官とも思われぬ無知かつ浅薄な認識だ。というより、発言の真意は日本に対するリップサービスにすぎず、退任した以上「あとは野となれ」の心境なのだろう。
日独印ブラジル4カ国が常任理に立候補して総会に提出したG-4決議案は確かに採択の目途が立たず、お蔵になったが、その主因はAU(アフリカ連合)の分裂にあった。背後には中国の猛烈な切り崩し奏功があった。ボルトン氏は国務次官在任中、国連軽視を貫いた。ブッシュ政権は安保理改革に無関心だった。確かに米国はG-4案に対抗して、日本と途上国1カ国だけを常任理自国に加える独自決議案を起草はしたが、提出はしなかった。そんな案が総会を通らないことは火を見るよりも明らかだったからだ。日本への義理立てにすぎなかった。
安保理改革は憲章改正を必要とする。そのためには総会の3分の2以上の賛成による決議案採択に加えて、加盟国の3分の2以上が国内手続きに従って憲章改正案を批准しなければならない。そこに安保理常任理事国5カ国が含まれていなければならないことはいうまでもない。国連加盟国の3分の2以上は途上国だ。途上国1カ国を加えるにしても、日本だけを常任理事国にする決議案が通る筈はないのだ。
安保理改革は失速状態にある。「つかみどころのないウナギ」という渾名をもつ潘基文・新事務総長の手腕に、安保理改革の早期実現は期待できそうにない。外務省は、一から出直しで、とりあえず準常任理事国を目指して根回しを始めたようだが、それも止むを得ない。実現可能な選択肢はどれかを見極めることが肝要だ。
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