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2014-09-22 00:00
円安のデメリットを増幅する原発稼働停止
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
9月18日に、東京外国為替市場の円相場は、108円台後半まで円安ドル高が進み、ニュース等でも大きく取り上げられた。円安は、アベノミクスの結果ではあるが、政策目標ではない。アベノミクスの三本の矢は、(1)金融緩和、(2)財政出動、(3)成長戦略、である。このうち、金融緩和が、ゼロ金利政策も量的緩和政策も大きな円安要因となる。今回の急激な円安は、米FRBが早々に出口戦略を打ち出したために起こったが、今後とも、常に円安圧力が掛かった状態にあることが予想される。日本は輸出大国であるから円安は望ましい、と考える専門家は皆無に等しいと思うが、円安が日本にプラスになるという漠然とした一般的イメージはなかなか拭い去れないように見受けられる。欧米の経済紙などにも、アベノミクスは為替操作である、という誤った批判が載ることがある。
しかし、実際は、日本は輸出大国とは到底言えない。2011年の世界銀行の統計によれば、日本の輸出依存度(GDPに占める輸出額の割合)は14%だが、世界平均は26%である。この数値は、対象の185か国・地域の中で148位である。「産業の空洞化」が叫ばれる通り、工場の海外移転が著しい。自動車産業などは、現地生産が主流となり、利益をドルから円に換算する際に、円安は確かにプラスに働く。しかし、これは帳簿上の話であって、日本経済を潤すことにはあまりならない。他方、食品など、原料を輸入し、それを国内で加工しているような業種にとっては、明らかにマイナスである。
円安の確実かつ深刻なデメリットは、原発の稼働停止に伴って輸入されているエネルギー源(主としてLNG)の価格が高騰することである。エネルギー価格の高騰は、間接的にあらゆる物価を押し上げ、景気に悪影響を与える。物価が上がる一方で消費活動が冷え込むという、教科書に書いたようなスタグフレーションになり得る。消費者に対する痛手の面で言えば、低所得者ほど大きくなり、社会的公正の観点からも問題がある。政府は、そういう点ももっと正確に伝えるべきである。
金融緩和は、もとより景気対策のために行っているのであるが、その効果が、円安を通じて、却って減殺されることになる。だからといって、消費税を8%に上げ、来年10月には10%に上げようとしている今、金融緩和を止めるという選択肢はあり得ない。むしろ、金融当局は、追加的な金融緩和を示唆している。金融緩和の必要性は長期化すると予想される。それは、原発稼働停止の悪影響の増幅が続くことを意味する。影響を少しでも食い止めるためには、原発の再稼働を急ぐ必要がある。逆に、原発を早期に再稼働させなければ、景気回復の見込みが低くなるから、金融緩和政策からなかなか脱することができず、円安が進み過ぎないようにすることは困難であろう。原発の迅速な再稼働が無ければ、アベノミクスは画餅に帰するのと言っても過言ではない。
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