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2014-10-03 00:00
米国から外交指導力を奪う国内政治の分極化
鍋嶋 敬三
評論家
米国の中間選挙(11月4日)が1ヶ月後に迫った。上院(定数100)の3分の1、下院の全435議席、38知事のほか市や郡、教育委員会なども含めた全土に及ぶ総選挙である。オバマ政権に対する民意が総体として示される選挙であり、中間選挙を受けて2016年大統領選挙が走り出す。政権Ⅱ期目の折り返し点に立つオバマ大統領は議会との対立でレームダック(死に体)化が進んでいる。大統領の支持率が40%台まで落ち込む中、終盤の選挙戦では下院の多数を押さえている共和党が上院でも優勢を伝えられるが、選挙結果によっては世界における米国の指導力の一層の低下は免れない。
「中道の死」と呼ばれる保守派とリベラル派への民意の分極化が進行中だ。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、自分が一貫して保守派(右)、あるいはリベラル派(左)だと認める人は合わせて2014年には21%で、20年前の2倍に達した。中道派とする人は10%減って39%に落ち込んだ。同性愛や移民問題など社会的に対立するテーマでは、民主党はさらに左寄りに、共和党は右寄りにシフトし、両党の支持層がイデオロギー的に厳しく対立する姿が明らかにされた。中道派はオバマ政権と共和党指導部の歩み寄りを望んでいるが、政治的分極化が進めば党派間の妥協の余地が狭まり、政治的合意の形成がますます難しくなる。
2013年には大統領と議会が決定的に対立し、政府機能の一部が停止に追い込まれた。統治機構の機能不全は米国外交に対する信頼性と指導力を奪った。ちょうど1年前、オバマ大統領は、力を入れてきたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を断念せざるを得なくなり、中国の拡張主義の浸透をみすみす許すという外交の失態を招いた。それは2014年に入ってからもロシアのプーチン大統領によるクリミア併合、ウクライナ東部への侵攻、中東での「イスラム国」の勢力拡大へとつながっている。環太平洋連携協定(TPP)での日米交渉でもオバマ政権の非妥協的な姿勢が年内合意の展望を暗くしている。
外交政策をめぐる左右の分極化は鮮明である。オバマ大統領の外交・安全保障政策について、民主党リベラル派の66%が「妥当」とするのに対して、共和党保守派では「強硬さが十分ではない」という批判が81%に達する。共和党はオバマ大統領の「弱腰外交」が米国の地位の低下を招いたと批判を強めてきた。「米国に対する脅威」の見方についても両党支持層間の差は大きい。イランの核開発、中国の興隆、イスラエル・パレスチナ紛争、イスラム過激派や「イスラム国」については、民主党に比べて共和党の危機感がかなり上回る。共和党員にとって最大の脅威はイスラム過激派(80%)であるのに対して、民主党員のそれは地球規模の気候変動(68%)であり、世界観の大きなずれを反映したものになった。この趨勢に変化がなければ、2016年の大統領選挙で共和党が政権交代を実現した場合、地域紛争に対して武力介入を含む厳しい米国の対応が予想される。
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