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2014-10-28 00:00
内航海運の力を見直そう
船田 元
元経済企画庁長官
先日は栃木県立美術館において、地元の内航海運にまつわる絵画などを拝見した。鬼怒川や思川、那珂川など、江戸や利根川から遡れる地域が、予想以上に奥深いことが分かり、あらためて感動したところだ。特に鬼怒川の上流にある清原の船着場では、宇都宮の街中よりも賑わいを示していたことは、大変興味深いところだ。江戸時代には、陸路である奥州街道や例幣使街道の宿場が、ある程度の賑わいを呈していたことは分かっていたが、海運の役割がそれを上回っていたことは、驚きである。
世界の地政学的な歴史を考えてみても、陸路で栄えた都市は比較的新しく、古くから栄えていた都市は、海運の便利なところが多かったように思える。皇太子殿下は学習院大学やケンブリッジ大学に留学されていた時、内航海運に関する研究に没頭されたという。殿下には海運から見た別の地図帳を、自ら持っておられたかも知れない。
今や一級河川と呼ばれる河川には、治水の名のもとに上流にダムが次々と建設され、また下流のあちこちには堰が設けられることとなった。このような状況では、小さな舟でも川を遡ることは出来ない。一方で鉄道や道路の輸送手段が飛躍的に発展し、海運のメリットがどんどん減ってしまった。
今更時計の針を江戸時代まで戻すことは不可能だが、せめて古地図が手に入れば、往時の海運華やかなりし頃の、今とは違ったまちの賑わいを味わうのも、興味深いのではないだろうか。出来ることならば、陸運と海運のデュアルシステムにより、災害に強い輸送インフラを、災害が多発する我々は持っておきたい。
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