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2014-11-02 00:00
(連載1)アメリカ国防の政争化を憂慮する
河村 洋
外交評論家
西側民主主義諸国が「歴史からの休暇」の最中にあった時、ロシアと中国が冷戦後の平和を破って再登場した。また、中東では宗教過激派の台頭によって国民国家による統治が危うくなっている。さらに北朝鮮やイランのように核拡散に手を染める国も次々に出現している。今日の国際安全保障像は二極対立の時代よりも複雑になっている。NATOウェールズ首脳会議でも見られたように西側同盟諸国は「歴史の終わり」をたやすく信じ込んでいたので、多様化する脅威の台頭に対処しきれていなかった。問題にすべきはアメリカの「衰退」ではなく、整備され切っていないその「国防力」である。
平和的な世界秩序のためには、崇高な理念も安全保障上の戦略も剥き出しのハード・パワーの裏付けが必要である。イスラム国(ISIS)に対する戦争はNATOのような既存の安全保障同盟の代わりにアド・ホックな有志連合に依存している。さらに党派やイデオロギーの枠を超えてアメリカの国防を再建しなくてはならない。国防の再建には安全保障政策が再建されねばならない。
現在、アメリカの国防政策は党派間および政党内部の分裂によって崩壊している。新アメリカ安全保障センターのミシェル・フローノイ最高運営責任者とリチャード・フォンテーヌ所長はアメリカの国防がいかに政局化しているかを述べている。それは「1970年代および80年代には党派を超えた投票は普通に見られ、それが超党派で外交政策のコンセンサスを形成するうえで一役買った。しかし昨今では党派の分断が厳格になって、合意の形成が妨げられている。政党内部の分裂も深刻である。共和党に関して言えば、財政支出削減重視派と国防力強化重視派の相克がある。民主党側に目を転じると、極左派はアメリカが世界規模で強大な経済的および軍事的なプレゼンスを維持してゆけば、格差拡大のような内政問題が置き去りにされるだけだと見なし、主流派から乖離している」ということだ。党派間もさることながら、同一党派内の相克が非常に厄介である。
アメリカ国民の多くがイラクとアフガニスタンでの長きにわたる戦争に嫌気がさし、保守派とリベラル派の双方にまぎれる孤立主義に惹きつけられている。これぞバラク・オバマ氏が2期も続けて大統領に選出された背景である。フローノイ氏とフォンテーヌ氏が主張するように、問題意識の高い人々の間で様々な経路を通じて超党派の安全保障政策のコンセンサスを模索しなければならない。アメリカの国防再建には多くの事柄を考慮に入れる必要があり、それらには脅威の適正な評定、軍事力の適正な規模、国防費の適正な金額などが挙げられる。しかし真の問題となるのは大統領の指導力である。オバマ氏は、今年の9月末にISISの脅威を過小評価した発言で物議を醸した。アメリカの国防におけるオバマ大統領の指導力には大いなる疑問を呈さざるを得ない。(つづく)
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