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2014-11-03 00:00
(連載2)ウクライナ選挙とロシアの対応
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
NATO諸国のウクライナへの対応が不明確なことも、ロシアのウクライナへの対応を曖昧にしている。一例を挙げると、9月4-5日に英国のウェールズで開催されたNATO首脳会議では、1997年のNATOとロシアの「基本文書」は一応堅持するとした。この「基本文書」では、新たに加盟した東欧やバルト3国には、NATOの基地や核ミサイルを配置しないと合意している。しかし東欧やバルト諸国には、ロシアがクリミアを併合し、ウクライナ東部に軍事介入している以上、「基本文書」は意味を失ったとして、NATOが基地をポーランドやバルト3国に前方展開することを望む雰囲気も強い。一方、ドイツやフランスなどは、そして米国も、ロシアを過度に刺激し挑発することを警戒している。ロシア軍と直接対決することは不可能だからだ。つまりNATO自体が、ウクライナに何処まで関与すべきか、その内部で統一した結論が出ていないのである。
ロシアはNATOが「基本文書」を破棄してその基地を前方展開することも、絶対に阻止しようとしている。そして、ロシアがどこまでウクライナに介入したら、NATOが「基本文書」を破棄するか、ロシアもまだ瀬踏みしている状況なのだ。ロシアのウクライナへの介入とNATOの東欧、バルト諸国、ウクライナへの関与はこのように密接に関係しているので、今はお互いに相手を読み切れず、両すくみの状況なのだ。
10月27日に、バルト諸国のある国の高位外交官たちと会って懇談した。この同じ国の外交官たちの間でも、「基本文書」の破棄の是非について、見解は割れていた。また、ドネツクやルガンスクが独自の選挙を実施した場合、独立宣言にまで進むか、さらにそれをロシアが承認するか、この問題についても彼らの間の見解は異なっていた。このこと自体が、ウクライナ問題への欧州内部の複雑な反応を端的に示している。
以上、ロシアによるウクライナ介入の目的は明確だが、ウクライナの今後の見通しが混沌としている背景を、国際関係を中心に説明した。今回の議会選挙後の国内情勢とそれに対するロシアの対応はどうなるだろうか。議会では親欧米派が圧倒的に優勢となったので、恐らくプーチン政権はしばらく成り行きを静観するだろう。しかし、やがて国内で経済の破綻、深刻な腐敗・汚職、2004年のオレンジ革命後のような政権内権力闘争などで国民の不満が高まって、近い将来、国内情勢が不安定化する可能性は大いにある。もしそうなればロシアはその状況に対応して、クリミアとウクライナ東部を除いたウクライナの他の地域が、親欧米派政治勢力の下で安定しないよう、今後もあれこれ策を尽くすだろう。ウクライナ国内の経済改革や汚職対策などが失敗し、再び混乱や不安定な状況が生じるような事態になると、将来的にはノボロシアを取り込み、クリミアや沿ドニエストルへの回廊を確保する戦略なども視野に入れるようになるかもしれない。(おわり)
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