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2014-11-17 00:00
リバランス外交立て直しの舞台が回った
鍋嶋 敬三
評論家
APEC(中国)、ASEAN(ミャンマー)、G20(オーストラリア)とアジア太平洋全域を巻き込んだ首脳外交の大舞台が回った。主題は超大国・米国に対する新興国・中国の挑戦である。中間選挙で大敗したオバマ米大統領にとっては、外交政策の柱であるリバランス(再均衡)戦略の立て直しにほかならない。第2次大戦後70年、米欧主導の世界秩序の揺らぎが大きくなっている。新興国が急速に経済力をつけて国際的発言力が増し、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)など国際的連携を強化してきた。中国は米国や日本の主導権が及ばないような「アジアインフラ投資銀行」や「シルクロード基金」の創設に走り出した。
アジア太平洋外交戦の主役は米国と中国である。APEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議を主宰した中国の自信は「太平洋は中国と米国の発展を受け入れるのに十分な広さがある」という習国家主席の発言に示される。中国は米国との対等な関係を誇示しようとし、習氏はオバマ氏との共同記者会見でも、米国との「新しい形の大国関係」を3回も口に出し、「核心的利益」の相互尊重を米国に迫った。一方で、米国が最も重視する海洋紛争を巡る国際法、国際規範の尊重、基本的人権については自国の主張を絶対譲らず、米国との不一致が際立つ結果となった。米中間の基本的問題での不一致をどのように処理するかが、アジア太平洋を巡る国際関係を左右する。
オバマ大統領は中国との協力的な関係がリバランス政策の「核心」ととらえている。ケリー米国務長官は米中関係を21世紀の姿を決定づける「最も重要な関係」と最大級の表現をした。新興の大国と既存の大国間の戦略的競争という「歴史的な落とし穴」を避けるための協力の必要性を強調。米国の対中政策の2本柱として(1)両国の違いを建設的に処理、(2)利害が一致するところは建設的に調整ーを挙げた。米中首脳会談で合意した温室効果ガス削減をオバマ大統領は「歴史的合意だ」と胸を張ったが、米国が厳しく批判する人権問題では習主席が「巨大な進展を遂げた」と自賛して全くかみ合わない。米中関係は不一致点をいかに縮めるかにかかるのだが、国の成り立ちの基本にかかわるだけに容易ではない。
オーストラリアの大学で演説したオバマ大統領は「アジア太平洋での米国の指導力は常に私の外交政策の基本的焦点である」と述べた。リバランス外交を総括したこの演説で大統領は「同盟国への米国の関与と決意を疑うべきではない」と中国やロシアに警告した。内容は(1)日本など同盟関係の強化、(2)ベトナム、インド、インドネシアなど新興国との協力拡大、(3)地域機構への関与増大。パートナーとなる友好国と協力してASEAN(東南アジア諸国連合)を中心とするEAS(東アジアサミット)を政治・安全保障の「主要なフォーラム(the leading forum)」に進化させる。安倍晋三首相も2015年のEAS10周年に向けて、EASの強化を提案した。そのような態勢を整えつつ、(4)中国との建設的な関係を追求するが、基本的人権など原則では妥協しないことも宣言した。アジア歴訪の最後の日程を7年ぶりの日米豪、および日米首脳会談で締めくくったのは、リバランス外交の最大のよりどころが同盟関係だという明快な事実を象徴している。
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