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2014-12-05 00:00
外交は衆院選の争点にならないのか?
飯島 一孝
ジャーナリスト
師走の衆院選が公示され、14日の投票日に向け各党の論戦が本格化している。だが、「アベノミクス」はじめ経済に集中している感があり、外交や安保問題がおろそかになっている印象が否めない。戦後70年を目前に控え、もっと百年の計を見据えた日本外交のあり方を論議すべきではないだろうか。そもそも今回の衆院選は本当に必要だったのか、という根本的な疑問が消えないが、すでに選挙戦が始まっており、その問題はひとまず置いておく。安倍晋三首相の思惑から始まったこともあり、安倍政権の2年間をどう評価するかが論戦の中心になるのは当然だが、今の議論は経済問題に集中しすぎているのが気になる。
安倍首相は一貫して「戦後政治の見直し」を主張しているが、外交・安保問題ではこれまでの自民党政権が継続してきた日米同盟重視路線を維持している。首相が推進している集団的自衛権の行使容認も、米国からの要請に応じて行っている面が強い。これでは米軍の行動を補完するだけにとどまってしまう。ウクライナ紛争で日本はG7諸国に同調してロシアへの経済制裁を強化している。当初、安倍政権は北方領土問題解決を重要施策に掲げ、プーチン大統領との交渉を進めようと制裁に慎重だったが、今ではすっかり追随した形になっている。これに対し、寛容な姿勢を示していたプーチン大統領も、最近では日本への不満を公言している。
日本政府は年内の予定だったプーチン大統領訪日を来年早々にも行う腹積もりのようだが、ロシア側からは「制裁を継続しながら領土を返せというのはあまりにも虫のいい話」という声が聞こえてくる。このままではここ1、2年はロシアとの正式交渉は無理な情勢だ。日本政府にとって当面最大の懸案は、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題である。沖縄県知事選挙の結果が示しているように、日米政府が決めた名護市辺野古への移設は撤回せざるを得ない情勢になりつつある。そうなったら日米同盟にひびが入ることになりかねない。
さらに、安倍政権は中国との間で先鋭化している尖閣諸島の領有権問題の解決も迫られている。日中首脳の間で本格的な会談を行い、緊張緩和策を早急にまとめる必要があるが、安倍政権にどんな具体策があるのか。また、韓国との首脳会談も近々に行わなければならない。外交課題は山積しているといっても過言ではない。攻める野党は、こうした外交問題を選挙戦で積極的に取り上げ、安倍政権の具体策や覚悟を問いただすべきだ。それを受け止め、政権側も真剣に検討すべきだろう。選挙戦は短いが、重要な問題を素通りすべきではない。
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