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2014-12-08 00:00
「女性が輝く日」は本当に来るか?
鍋嶋 敬三
評論家
安倍晋三首相が断行した衆院解散によって、政権運営の目玉としていた「女性活躍推進法案」は廃案に追い込まれた。12月14日の総選挙では自民・公明の与党勢力が勝利し、改めて政権を担う見通しだが、差し迫っている予算編成、消費増税見送り後の経済運営が最大の課題だ。解散で先延ばしになった、日米防衛協力の指針の見直しを含めた安全保障政策の再構築も待ったなしである。国会で多数を押さえても、国民の理解なしには進められない優先順位の高い重要課題が目白押しだ。首相が「政権発足以来、内閣の最重要課題の一つ」と位置付けてきた「女性の輝く日」という目標は本当に実現可能なのか?
ダボス会議の主催で知られる世界経済フォーラム(WEF:本部スイス)が10月末に恒例の「世界の男女格差報告(2014)」を発表した。調査対象142カ国中、日本は104位で韓国(117位)を除けば先進国中最下位だ。報告は経済活動への参加、教育、健康、政治参画の4分野における指標を総合評価した。日本は教育、健康(長寿)はともかく、女性の管理職への登用が低い経済部門で102位、政治面では女性の国会(日本では衆院)議員の比率が8%と低いことが影響して先進国中最低の129位にまで落ち込んだ。今回の総選挙でどれだけ改善するのだろうか。報告の主要著者であるWEFシニア・ディレクターのザヒディ氏は「男女格差の是正と経済的競争力は強い関連性がある」と指摘している。
バルト3国の一つ、リトアニアのグリボウスカイテ大統領(女性)は「経済と政治の世界で女性のより大きな参加なしに、世界の持続的成長と貧困の削減は不可能だ」と断言した。同大統領によれば、リトアニアは国家機会均等計画によって、男女の雇用格差(3%)は欧州連合(EU)で最も小さく、賃金格差(12.6%)もEUの平均以下との実績を示した。WEFの評価で同国は経済が35位、政治は65位で全体評価では44位と142カ国中の上位3割に入った。大統領は「男女均等はコスト高になるとの見方があるが、男女格差のコストの方がもっと高くつくことを認識しなければならない」と主張する。そして、格差是正のためには「労働市場と社会保障制度の構造改革を実行する真の政治的意思が求められる」と強調している。「日本のウィメノミクス」をまとめた米議会報告書(8月)では東京都議会での女性議員に対するヤジを取り上げ、男性優位の政治風土の中で、女性の職場進出や男女平等を促進しようとする安倍首相が直面する課題を論じた。首相の女性戦略は世界からその成否を見つめられている。
首相は10月、「我が国最大の潜在的力である『女性の力』が十分発揮され、社会の活性化につながるように」と「すべての女性が輝く社会づくり本部」を発足させた。廃案になった法案では国や地方自治体、企業の女性登用のための数値目標の設定を義務付けた。安倍政権は2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%に拡大する目標を掲げた。しかし、目標達成のためには、日本の労働慣行になってきた長時間労働の是正、男性の育児休暇取得など格差解消につながる税制、社会保障制度の抜本的改革が欠かせない。だが、改革への抵抗勢力の壁は厚い。首相の強力な政治的指導力なくして「女性が輝く日」は「日暮れて道遠し」になってしまうのだ。
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