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2014-12-19 00:00
(連載1)グローバル・フォーラムの「日本・アジア太平洋対話」
河村 洋
外交評論家
去る12月12日にグローバル・フォーラムと明治大学が主催する日本・アジア太平洋対話「パワー・トランジションの中のアジア太平洋:何極の時代なのか」が開催された。シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授をはじめ、対話に招かれたパネリスト達は、アジア太平洋地域のパワー・ゲームについてリアリストの観点から明解に述べた。 実は直前の『ウォールストリート・ジャーナル』紙が「中国の脅威が抜き差しならないほど大きくなれば、日本のプルトニウム施設は核兵器に利用されるかも知れない」との疑念を述べる署名記事を掲載していたことに、私は少なからぬ驚きを覚えていた。アメリカのオピニオン・リーダーが、日本を北朝鮮、イラン、パキスタンと同列に論じるかのように、警鐘を鳴らしたことには戸惑いを感じたのである。私は核不拡散がアメリカ外交で優先度の高い案件であることを充分に認識しているので、この発言はまるで日本をアメリカにとっての潜在的な「敵」と見なしているかのように響いた。問題は、アメリカのコントロールが効かなくなるほど地域の緊張が高まることで、そうした事態は1998年のインドとパキスタンによる核実験の応酬に見られた。
しかし、ミアシャイマー教授のリアリスト的な視点によれば、この記事の発想は、日本に対して「非友好的」なものとは言い切れないようだ。国家は 国力と国威の最大化を追求し、自国の周囲に確固とした勢力圏を築こうとする。そうして生存の可能性を高め、政策の選択肢を増やしてゆく。よって、リアリストの観点から見れば、「アメリカが中国の脅威の増大に対処する上で、あまりに弱く、信頼できないと映れば、日本が核保有に走るのは当然だ」ということになる。それは核兵器が中国に対して最も費用対効果の高い抑止力だからである。
そうした議論を念頭に置けば、日本の指導者達はアメリカと中国を両方とも相手にしたパワー・ゲームに絡んでまで核兵器を保有する覚悟があるのだろうか、と問わざるを得ない。歴史的にもアメリカはアジアで支配的な勢力の台頭を受容しなかった。それは1899年のジョン・ヘイ国務長官による門戸開放政策からもわかる。たとえ中国に宥和的姿勢をとるように見えることがあっても、アメリカがそのためにアジアでの影響力を手放すことは考えにくいばかりか、極東が1998年の印パ核競争のように管理不能に陥ることなど欲していない。よって日本の指導者達は、歴史認識に関して注意深い言動をとるべきである。何と言ってもミアシャイマー氏をはじめ名立たるオピニオン・リーダー達が日本の核保有の可能性をこれほど公然と語っているのである。
今回のグローバル・フォーラムの主催した「対話」は、非常に印象深く洞察力に富んだものであった。私は、この「対話」が提起した論点として以下に3つの論点を提起したい。第一はアジア転進政策の可否である。確かにアジア新興経済諸国での市場の機会はアメリカにとって重要である。しかし、それはアメリカが「ヨーロッパと中東への関与を弱めてもよい」という意味をもつほど重要だろうか?ウクライナ危機は、アメリカのアジア関与を低下させるだけなのだろうか?そうとは言えない。ロシアは日本の北方空域に頻繁に侵入しているからである。この国はヨーロッパとアジアの双方で我々の脅威なのである。さらに中国は世界規模でアメリカに立ち向かっている。中国が中東への戦力投射能力がないにもかかわらず、アメリカ一極支配の世界を恐れてロシアとともにイラク戦争に反対したことを忘れてはならない。また、中国の対アフリカ援助は物議を醸しているが、それも影響力の拡大のためである。よって私は、アメリカがヨーロッパと中東での関与を低下させることは、アジアでのアメリカのプレゼンス強化を保証するものではないと信じている。遺憾ながら「イスラム国ISIS」が台頭する一方で、中国が東アジアでますます挑発的になってきている事態に見られるように、オバマ政権によるアジア転進政策は中東への関与を低下させただけで、アジアでのアメリカのプレゼンスは強化されていない。(つづく)
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