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2014-12-23 00:00
(連載2)ミアシャイマー教授の攻撃的現実主義と台頭する中国
坂本 正弘
日本国際フォーラム上席研究員
以上がミアシャイマー教授の主張だが、幾つかの論点を指摘したい。第1は、Kenneth Waltzの構造的リアリズムの流れを受け、「大国が地域覇権を目指すのは、国際システムからの構造的圧力(System level)によるもので、文化などその国の固有(Unit Level)の要因によるものではない。中国が地域覇権を目指し、米国がこれを阻止するのは、地域覇権国のSystem levelから来るもので、これは『大国政治の悲劇』だ」という論点である。筆者は2013年11月に「Beijing Forum 2013」に参加したが、その最大のテーマは「如何にして『大国政治の悲劇』を避け、米中2国の特別な関係を築くか」であった。ミアシャイマー教授は、幾度か中国に招聘され、中国人と議論を重ねたが「中国人は米国人以上にリアリストだ」と評した。
第2の論点だが、筆者は「米国は、世界に700の基地を持ち、瞬時の対応能力を持つ。米国こそが世界覇権国ではないか。特に、西半球の地域覇権が他の地域での他国の覇権阻止を目指すのは、世界覇権ではないか」と指摘したが、M教授は「米国も、パックス・ブリタニカの英国も、世界覇権国ではない」とする。
第3の論点として、ミアシャイマー教授は「米国は長らく、世界を欧州、中東、アジアの順で重視してきたが、欧州でも、中東でも、地域覇権を握る国はなく、地域覇権を目指す国としては、アジアの覇権を目指す中国が最重要だ。米政権は、中東ではISISに拘わり、ウクライナではロシヤと対立しているが、これを改め、アジア重視を進めるべし」と主張する。筆者が「それはどのようにして可能か」と質問したのに対しては「米国の政策転換がいつか起こる。それはSystem Levelの圧力によるものだ」と楽観的だった。
第4の論点に、ミアシャイマー教授は「NATO、EUの東方への無神経な伸長が、プーチン大統領を追い詰めた。ロシヤは衰退の国で地域覇権を求めていない。シリヤやイランなどでロシヤとの協力が必要なのに、ロシヤを中国側に追いやる愚行をしている」と述べたが。「プーチン大統領の訪日をどう思うか」との質問に対しては、「安倍首相が主導性を発揮し、オバマ大統領に米ロ修好を提案すべき」としたが、これもSystem Levelからの圧力に期待しての発言かと思われた。(おわり)
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