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2014-12-29 00:00
アメリカ海軍は敵のA2ADにどう対処するか?
河村 洋
外交評論家
中国やイランのようなアメリカの敵の間で、現在A2AD能力の急速な向上が見られ、米海軍はその対抗手段の構築を迫られているが、冷戦後の国防費削減がアメリカの艦隊防空能力構築の制約となっている。敵のA2ADの台頭は別に新しいことでもない。冷戦期にはソ連空軍がアメリカ海軍の優位に立ち向かおうと、Tu22バックファイアやTu19バジャーといった戦略爆撃機にキャリアー・キラー・ミサイルを搭載した。空母機動部隊をソ連の飽和攻撃(一つの攻撃目標に対し、一度に複数のミサイルを撃ち込むこと)から防衛するため、アメリカ海軍は制空と要撃が行なえる艦隊防空戦闘機の製造を模索した。海軍は強力なレーダーと長射程ミサイルを装備した戦闘機を要求した。それがF14トムキャットである。F14は強力なレーダーによって敵の攻撃機に発見される前に相手を発見できた。またこの戦闘機は同時に複数の標的に対して長射程のフェニックス空対空ミサイルを発射できたので、敵のキャリアー・キラーによる飽和攻撃を無力化できた。
しかし、ソ連崩壊後、米議会は海軍に対してF14に代わってより低価格でマルチロールの要求にも応えられるFA18を採用するように要求してきた。この間に、中国とイランは自国の近隣海域の支配的地位を主張しようとする準備をすすめていた。当時はイージス艦が艦隊防空を担い、F14戦闘機部隊では能力過剰で維持費もかかりすぎると見られていた。しかしながら駆逐艦がどれほど先進技術の粋をこらしても敵の航空攻撃に対して脆弱なのは、フォークランド戦争でイギリスの駆逐艦シェフィールドがアルゼンチンのエグゾセ・ミサイルに撃沈されているのを見ればわかる。FA18ホーネットおよび同機発展型のスーパー・ホーネットはマルチロールで費用対効果も高い優秀な戦闘機ではある。アメリカの同盟国でもカナダ、オーストラリア、スペインなどでは空軍機のF15ではなく、こちらを採用している。しかしこの戦闘機は敵の飽和攻撃の迎撃には特化していない。またFA18はF14よりも戦闘行動半径が短く、飛行速度も遅い。アフガニスタン戦争ではF14がFA18の航続距離を超えて内陸奥深くのタリバンとアル・カイダを攻撃した。
現在、海軍は空軍と共同でFXあるいはFAXXプロジェクトといった第6世代戦闘機の開発を推し進めている。それらの戦闘機は2030年にスーパー・ホーネットに代わって配備予定である。エンジン技術の向上により、航続距離も飛行能力も向上するだろう。しかし現在の予算制約によって海軍は軍事産業の諸社からの提案を断念する羽目に陥るかも知れない。フリーランス記者のデーブ・マドジャムダール氏は『ナショナル・インタレスト』誌への12月19日付けの投稿で「海軍はF35Cを新型のエンジンとミサイルによってアップグレードするかも知れない」と記している。しかし空軍でF22を操縦するパイロット達はこの案に否定的である。「単発エンジンの戦闘機では双発エンジン機に比べてパワー不足は否めず、機動性も併記搭載量も低くなる」と言う。ここで思い出すべきは、F14は戦闘能力でも機動性でも空軍機のF15に対して遜色なかったことである。
冷戦の終焉は、アメリカの敵の終焉とはならなかった。相手は見せかけの平和の時期に爪を砥いでいたのである。アメリカが国防費の支出を渋るようなら、後の代価は大きくなるだろう。アメリカの敵は自分達のA2AD能力によって米海軍が行動を阻まれると見れば、強気な態度に出かねないからである。他方で艦隊防空のためのプロジェクトを円滑に進めるためには、不必要なコストの上昇と配備調達の遅延を抑えねばならない。ジョン・マケイン上院議員は来年より軍事委員会委員長に就任する見込みであり、軍事産業の経営とペンタゴン官僚組織の非効率性を厳しく批判している。アメリカ海軍が敵のA2ADから自らの艦隊を守るには、技術的問題以外にもこれほど多くの課題がある。
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