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2015-01-01 00:00
河村洋氏の「米海軍はA2ADにどう対処するか」にうなずく
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
いま、「尖閣諸島沖に中国海軍艦船常駐」という一部報道があり、さらに機密解除の英外交文書により1982年秋に鈴木善幸首相が「尖閣問題棚上げ”合意”」を来日サッチャー英首相に伝えていたことも判明した。この棚上げ”合意”は、78年訪日の鄧小平氏が初めて発言したものが独り歩きし、「国際問題には疎い善幸首相」の手でかくも”見事に”結実したかと思わざるを得ない。
また、年末に本欄に掲載された河村洋氏の「アメリカ海軍は敵のA2ADにどう対処するか?」にはうなずくこと多々だったが、1970年代後半から新聞社の国際報道の場にいたわたしには、奇しくもここで河村氏指摘の一片に、別の思いがよぎった。ほんの一片とは、フォークランドの事例における当時の英駆逐艦「シェフィールド」の沈没の時系列だ。また、フォークランドの事例が「領土紛争である」という一点において、明らかに似て非なる尖閣問題と外交戦略では同一であるものと確信する。なぜならサッチャー首相来日は、まさにフォークランド凱旋報告のための世界行脚の一部だったから。
この「フォークランド紛争」緒戦には、英原子力潜水艦が魚雷でアルゼンチン巡洋艦「へネラルベルグラノ」を撃沈した。へネラルベルグラノは1930年代末期に米国で建造され、戦後にアルゼンチンに渡った老朽艦だった。一方、英駆逐艦シェフィールドは、アルゼンチン機による仏製空対艦ミサイル攻撃で大破炎上を続け、その5日後の曳航中に沈んだ。当時米欧では、サッチャー英首相を先頭に「Falkland War」と、それが「戦争である」ことをはっきり示したのに、平和国家日本は「フォークランド紛争」という表記にかたくなにこだわったのを思い出す。結果的に、英駆逐艦シェフィールド沈め、注目されたミサイルはトビウオの意の「エグゾセ」であった。でもパリ特派員は「仏テレビではエグゾセではなく、”エグゾセット”と言っている」と新聞社本社への連絡では譲らなかったが、日本では表記「エグゾセ」も「フォークランド紛争」も変更されることはなかった。
さらにシェフィールドを沈めたエグゾセは、当時の軍拡を批判するメディアの論調の好材料となった。「最新鋭駆逐艦も小ミサイルの前に無力ーーだから戦争はーー」という、いかにも平和国家的な連載記事も、新聞にかなり目についた。だが実際には、アルゼンチンの中古艦を原潜の魚雷で葬った英側に、相手をなめる空気があり、フォークランド遠征艦隊群の防空システムにもゆるみがあった。さらに駆逐艦シェフィールドの艦体はアルミ合金を多用、その泣き所をエグゾセが突いたのも事実。というのも、その後中東では1987年に米ミサイル・フリゲート艦「スターク」が、同様にイラク機発射のエグゾセで被弾したが、スターク艦体は一部大破したものの、沈没はなかったからだ。あれから30年余の歳月が流れ軍事技術も革命的に進歩したが、グローバルな国際緊張は依然、変わることがない。
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