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2007-01-31 00:00
連載投稿(2)ロシアを理解するために
矢野卓也
日本国際フォーラム研究助手
どの国にとっても、つきあいやすい国と、つきあいにくい国とがある。つきあいやすい国とは、必ずしも友好国という意味ではなく、相手の動きや出方が理解しやすい国ということである。すなわち、同時代的な認識とある種の「言語」を共有している国とでもいえるだろう。わが国とロシアは、果たして同時代的な認識を共有しているのだろうか。そして、われわれはかれらと「言語」を共有しているのだろうか。
冷戦期、世界を切り分けていたイデオロギー対立は、ある意味でわかりやすいものであった。冷戦言語とでもいうべき共通の記号の交換がなされていたと解釈することもできる。しかし、冷戦が終焉した現在、ロシアが冷戦言語の残滓をもっていまだ行動しているとは言い難い。ロシアはソ連時代の隠微な体質から未だ脱却できていないというよりは、むしろ、そもそもロシア的言語というものにしたがって動いていると考えられはしないだろうか。冷戦期のソ連は、共産主義というイデオロギーがロシア的言語によって補強されていたともいえる。
そのように考えた場合、わが国の課題はふたつあるといえる。ひとつはロシア的言語を探り当てることである。そうすることによって、われわれは彼らの行動に意表をつかれることは少なくなるだろうし、こちらの言語を翻訳する手立ても編み出せるかもしれない。もうひとつは、より困難な課題である。すなわち、ロシア的言語を探り当てたとしても、それにかぶれることなく、あくまでもわれわれの言語にもとづいて行動することである。それを「文明国」の言語と呼んでも、あながち外れてはいないと思うのは私だけだろうか。(おわり)
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