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2015-01-05 00:00
(連載1)機雷掃海と改憲準備
角田 勝彦
団体役員、元大使
12月の衆院選勝利(与党3分の2維持)で自民総裁任期延長論まで浮上し勢いづいた安倍晋三首相(総裁)と自民党は、今年、改憲に向けた準備を本格化させる構えとされる。その一つが昨年7月の閣議決定に基づく安全保障法制の整備で、機雷掃海が当面の焦点になろう。ただし違憲との批判を含む野党、国民の反対があるほか、与党間でも意見の相違が見られる。公明党は中東地域のシーレーン(海上交通路)で停戦前の機雷掃海が必要となった場合の自衛隊参加に否定的な見解を示している。安倍政権は、12月の組閣で唯一新任の中谷元・防衛相に指示し、4月の統一地方選後、5月の大型連休前後に安保法制整備関連法案を国会に提出する予定である。このため、昨年12月に始まった自公の協議を、今春に向け加速させようとしている。
政府は、関連法案の夏までの成立をめざしている。しかも機雷掃海の実質面のみならず、集団的自衛権行使の一部容認と集団安全保障への参加を、関係法に明記して、昨年7月の閣議決定を法的に裏付ける方針と見られる。あまりに強引である。米国のハルバースタムは、ベトナム戦争の失敗を描いた「ベスト&ブライテスト」で、原因を「賢者の傲り」と指摘した。4月の統一地方選までは、本問題を触らずにおこうという与党の方針も、日米防衛協力の指針(ガイドライン)改定が迫っている現状から、無理が重なっている。国民の最大の期待は経済回復である。原油価格の低落からアベノミクスに曙光が指している現在、安全保障問題で安倍政権が高ころびにならないことを期待する。
長期政権への道は、なお険しいが、12月の衆院選の成果で与党内に長期化実現への期待の声も出ている。安倍首相は、今年9月の総裁選で再選される可能性が高いが、その任期は、現行規定では連続で2期6年までとなっている。すなわち平成30年9月までとなる。これを「3期9年」まで延長すべきだというのである。安倍首相が招致に成功した2020(平成32)年東京五輪・パラリンピックを安倍首相のままで迎えるべきだというのが理由である。これには首相の悲願である憲法改正に道筋をつけたいとの思惑も働いている。自民党の谷垣禎一幹事長は1月1日、年頭の所感で「戦後70年に当たり、切れ目のない安全保障法制の整備と憲法改正実現に向けた議論を国民の理解を得ながら進める」と表明した。同党の憲法改正推進本部の礒崎陽輔事務局長は「参院選までに改憲案を作りたい」と意欲を示している。
安倍首相は、昨年、改正に必要な国民投票の年齢を18歳以上に引き下げることを柱とした改正国民投票法が成立したことを踏まえ、1月4日、「どういう条文から国民投票を行うのかなど、国民的な理解を深める作業をしていきたい」と述べた。すなわち自民党は、最初の国民投票で問う憲法改正原案の議論を進め、改正実現に向けた機運を高めたい考えである。具体的には、衆参両院の憲法審査会で、有事などの際に国民の権利の一部を制限して総理大臣の権限を強める「緊急事態」や、「環境権」、「財政規律」など、各党が比較的賛同しやすいとみられるテーマが考えられている。憲法第9条関係は、そのあとの改憲を目指しているが、昨年7月の閣議決定に基づく安保法制整備は、実質的なその前取りになる。平成28年夏には参院選があり、憲法改正の発議要件である3分の2以上の議席を与党で確保できるかが焦点になる。平成28年夏の衆参同日選論も自民党内でささやかされている。もっとも経済回復の実績作りが先であろう。消費税の引き上げも迫っている。(つづく)
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