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2015-01-18 00:00
(連載2)フランスでのテロ事件
水口 章
敬愛大学国際学部教授
第2のネットワークは、弟とチュニジア系フランス人ハキムの関係である。ブーバケ・ハキムは北アフリカのイスラム過激派とヨーロッパの若いイスラム過激派のネットワークを構築してきた人物だと分析されている。ハキムは2013年2月にチュニジアで野党の指導者シュクリー・ベライド氏を殺害したとされ、現在はシリアまたはイラクでイスラム国に参加していると見られている。北アフリカ諸国(マグレブ諸国)のイスラム国への参加者は、チュニジア3000人、モロッコ1500人、リビア600人、アルジェリア200人に上るといわれている。これらのネットワークが事実だとすると、パリ19区の過激派モスク(8年前に閉鎖されたと報じられている)の役割が注目される。そこに集まっていた若者たちは「ビュット・ショーモン」ネットワーックと呼ばれている。
「アラビア半島のアルカイダ」と、ハキムが関係していたと思われる北アフリカのイスラム過激派を結ぶ組織があるとすれば、それは、「ホラサン」グループではないかと考えられる。ホラサンはアフガニスタンやパキスタンでの戦闘経験がある少数の精鋭からなるアルカイダの一つのグループである。同グループの指導者ハドリは、ビンラディンの側近であった人物で、広い人脈を持つ。ホラサンは、ザワヒリの命でシリアに入り、活動を行っている。2014年9月23日、アメリカは、このグループはイスラム国よりも脅威だとしてシリアへの初の空爆で標的の一つとし、その後も、攻撃を続けている。
1月8日、イギリスのアンドルー・パーカー情報局保安部長官(MI5)は、シリアのアルカイダの中心的グループが欧米を標的にテロを計画していると警告を発している。そして「各国と協力して最大限の努力をしている。すべてを阻止する望みはないことは分かっている」と語っている。クアシ容疑者によるフランスでのテロ事件は、MI5が指摘するテロ計画の一部なのか、アルカイダの呼びかけやイスラム国への同調なのか、現時点で分析することは難しい。
しかし、フランスをはじめヨーロッパでイスラム関係への攻撃や、イスラム移民排斥運動が高まり、イスラム教徒の被害者が出る事件が発生すれば、事態は一気に悪化する恐れがある。すでに、反イスラムデモやモスクに火炎瓶が投げ込まれる事件などが発生している。中東地域の不安定さが、欧米各地にリスク連鎖をもたらしつつあるとすれば、現在守勢に立ちつつあるイスラム国や、弱体化しているアルカイダが望んでいる構図だろう。(おわり)
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