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2015-01-25 00:00
マッカーサー道路の呼称はもう止めよう
松井 啓
大学講師、元大使
昨年3月29日、東京の虎ノ門と新橋間の約1.4キロの道路が開通したことをマスコミは「マッカーサー道路開通」と報じた。開通記念式典では舛添都知事が「地上部分はパリのシャンゼリゼー通りに匹敵する国際色豊かなプロムナードにしたい」と挨拶したと報じられた。この新道路は東京都市計画道路幹線街路環状第2号線の一部をなす新橋・虎ノ門地区再開発・道路事業である。地下トンネルの自動車道と地上道路区間の2層構造となっており、地上部分は幅員が40メートルで、自転車道を含む幅員が片側13メートルの歩道にはオープンカフェが並び、2020年の東京五輪では「オリンピック道路」として活用されることも期待されている由。
そもそもこの区間の道路整備は日本を占領期間中にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が虎ノ門近くの米国大使館から東京湾の竹芝桟橋までの軍用道整備を要求したことに始まるとの俗説に因んで、最高司令官マッカーサー元帥の名称を取り「マッカーサー道路」と呼ばれている由である。しかしながら、東京都心の大通りに外国の将軍の名称を付した大通りを開設することには、違和感を禁じえない。
マッカーサー元帥はGHQ最高司令官として敗戦後の1945年から7年間日本に君臨・統治し、1946年2月には現日本国憲法の草案(通称マッカーサー憲法)を作ったと言われる人物である。確かに、戦後日本の民主化と経済発展の端緒を作った功績はあるが、だからと言って、今さら新たに開通した大通りにマッカーサーの名を冠して「恭順の意を表する」必要はあるまい。幸いに地元の委員会が道路の愛称を公募の結果2013年5月31日に「新虎通り」に決定されている由。本年は戦後70年に当たり改めて戦後の歴史を振り返る種々のイベントが企画されている。開通1周年記念までに「新虎通り」(ニュー・タイガー・アベニュー)の愛称を徹底させ、外国人観光客の地図には「マッカーサー道路」(ジェネラル・マッカーサ・アベニュー)と記さないで欲しい。
外国では革命や戦争により道路の名称が変わることが多い。ソ連邦崩壊によりそれまでソ連圏に属していたブルガリア等の東欧諸国はおろか、ソ連邦の構成国であったカザフスタン等も、独立するや否や国内の首都を始めとする道路の名称をマルクスやレーニンから次々と自国の英雄などの名前に改称した。また学校や研究機関、文化関係の公共施設や公園からもマルクスやレーニンの立像や胸像が撤去された。このように道路の名称はその国の独立意識にも関連しており、独立国家である日本の首都の中心にある道路の名称に征服者であった外国の将軍の名前を冠することの意味合いを認識すべきである。因みに、韓国は1992年以来日本海の呼称を「東海」とすべく(少なくとも併記)鋭意努力してきており、一部アメリカの教科書や国際線航空機内の座席ポケットの地図では成功している。呼称は国際舞台では自国の覇権や勢力圏を示す重要な道具である。領有権を争う島や海峡の名称にも我々はもう少し敏感になるべきであろう。
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