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2015-02-02 00:00
(連載1)「イスラム国」人質事件とゲームの理論
角田 勝彦
団体役員、元大使
国際テロ組織「イスラム国」(ISIL)に拘束されていた後藤健二さんが殺害されたとみられる動画が、2月1日朝ネットで公開された。右組織の非道さ・卑劣さには憤慨するばかりで、先の犠牲者湯川さんのご遺族及び後藤さんのご遺族には深い哀悼の気持ちを示したい。かかる国際的暴力団は、国際社会と連帯して排除するほかない。
以上を基本認識として、ここで私なりに、ISILの今回の一連の動きを、国際政治学のゲームの理論、とくに「囚人のジレンマ」の理論から分析してみたい。もちろん、これはISILが統一された意思決定機構を持ち、宗教的盲信はさておき、合理的思考を行える組織である(「国」ではない)ことを前提としている。右組織については「狡猾」という評価が行われていることからして、この前提は的外れではあるまい。日本国内の情勢もマスコミ報道やネットを通じて良く承知しているようである。2月1日の動画では恐怖を中心に神経戦も仕掛けてきたようである。
さてゲーム理論は、数学者J.フォン・ノイマンと経済学者モルゲンシュテルンの共著『ゲームの理論と経済行動』(1944)を出発点として発展した理論である。複数の意思決定主体が相互依存の関係にあるときの意思決定に関する理論である。その中に「囚人のジレンマ」と呼ばれる考え方がある。つまり、共犯の二人の囚人がいて、相手側が罪を告白した場合、自分も告白すると8年、告白しないと10年、相手が告白しない場合、自分が告白すると1年、告白しないと2年の刑を受けるとする。そうすると、相手がどのような選択をしようとも、告白した方が有利である。従って結果として双方ともに告白し、ともに8年の刑を受けることになるとの考えである。
今回ISILは、敵対する有志連合ないし諸国家の力を弱めるために日本及びヨルダンをこの囚人の立場に追い込んだものと考えられる。今回のISILの諸行動の目的は、下記の(1)~(4)のようなものと見られるが、「告白しない」に該当するのは(2)の基本にある「テロリストとは交渉しない」という姿勢である。
(1)競合する他の国際的テロ組織に対抗し「イスラム国」の名を売る。
(2)敵対する国家ないし有志連合の攻撃ないし結束を弱める。
(3)ヨルダンで収監中のリシャウィ死刑囚を釈放させる。
(4)あわよくば多額の身代金を入手する。(つづく)
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