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2015-02-27 00:00
日本をおとしめた河野洋平の2大失政
杉浦 正章
政治評論家
慰安婦強制連行の朝日大誤報のほとぼりが冷めたと思ったのか、血が騒ぐのか、元衆院議長・河野洋平が78歳にして意気軒昂だ。その発言も安倍を「右翼政治」よばわりして、はばからない。人間年を取って気を付けねばならぬことは「短絡」である。深く思考する余裕がなくなるのか、右か左かと、とかく断定したがる傾向が出てくる。これを「加齢断定症候群」と名付けたい。河野発言を分析すると、この症候群の深刻な症状が見られる。自民党を離党して新自由クラブを結成したときから、「左翼政治」とは言わないが、「左傾化政治の欺瞞(ぎまん)性」があって、好きになれない政治家だった。「夢よもう一度」も理解できるが、ほどほどになさった方がよいと思う。河野の2月24日の名古屋発言は、まず首相・安倍晋三が村山談話を継承するのかどうかについて「歴代内閣が継承してきた日本の歴史認識が10年刻みで変わることはありえない。どういう文言で談話を書くかは決まり切ったことだ」と「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのお詫び」の“キーワード三点セット”をそのまま受け継ぐべきだと主張した。安倍がこれだけでカチンとくるのは必定だが、さらに加えて「自民党にはリベラルな議員もいると思うが、目立たない。これ以上『右』に行かないようにしてほしい。今は保守政治と言うより右翼政治のような気がする」とまで言い切った。
これで安倍はカンカンだ。時の自民党政権を「右翼」呼ばわりする発言を初めて聞いた。さらに自民党から蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われている自らの談話について「官房長官談話は誠心誠意作り上げた。はっきりとした裏付けのないものは書かなかったので、『強制性』という言葉は入っていない。強制性についての文書は見つからなかったからだ。しかし、強制性が全くなかったかと言えば、いくつか具体的なものはある」とあくまで強制性にこだわった。それでは、反論すれば、父親河野一郎より政治力はかなり落ちるが「輝かしき」河野洋平の政治家としての人生の中で、日本をおとしめた大失政が2例ある。一つは小選挙区制の導入であり、他の一つは「河野談話」のあとの河野発言である。現行の小選挙区比例代表制は、「政治家が小粒になり、劣化する」と筆者は政治部長時代、自民党に意見を聞かれて反対論を述べた。しょせんは蟷螂(とうろう)の斧のような発言であり、当然河野はこれを無視して推進。その揚げ句が今になっての大反省である。河野は「私は大きな間違いを犯しました」とまるでISILの人質のように語る。「私は大きな間違いを犯しました。今日の日本の政治は、劣化が指摘され、信用ができるか、できないかという議論まである。そうした一つの原因が小選挙区制にあるのかもしれない」と述べ、衆院選に小選挙区制を導入した自らの判断は誤りだったと認めたのだ。しかし時既に遅しだ。選挙制度改革など圧倒的多数を占めた自民党がやるわけがない。謝って済む問題ではない。政治家の劣化は国の劣化につながりかねないのだ。
次ぎにこれに勝るとも劣らないのが、「河野談話」とこれに伴う「河野発言」である。朝日の「強制連行」や「女子挺身隊」の大誤報が大きく影響を与えた1993年の官房長官・河野洋平談話は、「軍による強制連行は確認できない」が基調であり、事実強制連行を示唆する文書類は一切発見されていない。しかし問題はこれを発表した後の河野の明らかに意図的とみられる発言にある。記者会見で「強制連行の事実があったという認識でよいか」と聞かれて、「そういう事実があった。結構です」と明白に認めてしまったのだ。この発言が慰安婦問題の全てとなった。韓国のみならず欧米諸国にまで、「韓国女性を狩り出して、レイプしながら連行した」との戦後史に残る大誤報の発端となった。この「性奴隷」説は国連人権委員会のクマラスワミ報告にも下劣な表現で引用され、米リベラル系マスコミが報道し、米政府内にも誤認の風潮が生じて消えない。朝日が強制連行の誤報を認めても、いったん染みついたイメージは消えないのだ。
一政治家の判断が、これほど日本をおとしめた例を知らない。いくらノーバッジで隠居の身でも、せめて現状認識だけはしっかりしてもらいたいと思うが、河野は現政権を「右翼政治」と一言で断ずる。しかし、安倍政権が3回の国政選挙で圧倒的な国民の支持を受けたことは何を物語るのだろうか。それは有権者が河野らが「左傾化」させた政治を、正常な姿に「復元」しようとしているからに他ならない。河野が喜々として訪中するのは自由だが、中国の海外膨張主義に対して、国の領土をいかにして保全するのか分かっていない。集団的自衛権で日米同盟を固めることに共産党と同じように反対なのか。跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)するテロリストから邦人を救出するのに自衛隊の海外派遣が不要だというのか。「自民党にはリベラルな議員もいると思うが、目立たない」と発言したが、目立たなくしたのは国政選挙による時代の淘汰(とうた)だ。時の政権への「右翼政治」呼ばわりも、小選挙区制と同様に「私は大きな間違いを犯しました」と早く気付くことを渇望する。
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