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2015-03-09 00:00
(連載2)「海外での武力行使」を考える
角田 勝彦
団体役員、元大使
安倍首相は、昨年7月1日の閣議決定の後の記者会見で「武力行使が許されるのは、自衛のための必要最低限度。従来の憲法解釈の基本的な考え方は何ら変わるところはない」と強調した。また閣議決定の前後に「自衛隊が武力行使を目的としてかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはない(敵国への大規模空爆や地上部隊投入を否定する意味)」「専守防衛を維持し、海外派兵は許されないという原則は全く変わらない」とも語っている。だが7月14/15日の衆院・参院集中審議で、内閣法制局の横畠裕介長官が「(問題の場合は)日本が直接攻撃を受けたのと同様な被害」と意味を説明したのに対し、安倍首相は中東のホルムズ海峡に機雷がまかれ、原油やガスの輸入が滞る事態に関し「日本経済に相当な打撃になる。武力行使にあたる機雷掃海をすることはあり得る」と表明した。戦闘継続中の機雷除去は国際法上「武力の行使」に該当しても、「受動的、限定的」であり、戦闘行為とは違うという理屈のようである。これに対し、民主党の岡田克也元代表は「経済的な打撃と、わが国への直接の武力攻撃を同列にするのは理解できない」と批判した。
そもそも 日本に自衛権はあるが、集団的自衛権の行使は認められていないとする政府見解は、1970年ごろに固まり、1981年に国会へ提出された政府答弁書で確立した。第9条で許されている自衛権の行使は「必要最小限度」にとどまるべきだとし、自国が攻撃を受けていない状態で武力を使う集団的自衛権は、その範囲を超えるため憲法上許されないとの解釈だった。
筆者はこれまでの投稿でも繰り返したように、日米安保条約締結は国際法上集団的自衛権の行使であり、日本国憲法が許さないのは「海外での武力行使」であると認識している。これが「自衛のための必要最小限度の実力」と位置づけられる自衛隊による「専守防衛」である。なお武力攻撃が自国に対するものか一義的には他国に対するものかは実は本質的問題ではないのかも知れない。もちろん「海外での武力行使」禁止に例外はあり得る。1956年3月、鳩山一郎首相は国会答弁で「座して死を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれる」旨述べている。
しかし、ホルムズ海峡の機雷掃海は、これと同次元の問題ではない。経済的問題としても危機的な問題にはならないだろう。さらに個別的自衛権の問題でなく、集団的自衛権の問題として、すなわち「他国への武力攻撃による」存立危機事態と認識すること自体が理解できない。政府が説明するような危機が生じた場合は、個別自衛権の問題になるだろう。要するに。停戦前の機雷掃海の事例は、集団的自衛権の行使が可能(とくに「海外での武力行使」が可能)ということを法律で明示するための無理な事例である。断固として排除すべきであろう。(おわり)
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