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2015-03-15 00:00
(連載3)プーチン大統領は核大国の責任を果たす気があるのか?
河村 洋
外交評論家
ロシアは北朝鮮とも関係強化をはかる行動に出ているが、それもまた核拡散に手を染める国を勢いづけることになる。昨年よりモスクワや極東地域の州からロシアの政治家が北朝鮮を頻繁に訪問し、貿易と投資の促進と北朝鮮からシベリアに通じる鉄道網の整備を話し合った。北朝鮮外務省は本年初旬に経済面のみならず政治面と軍事面でもロシアとの関係を拡大すると述べたが、ロシアは北朝鮮に対する国際的な制裁もあって軍事援助は再開していない。しかし北朝鮮はミグ17、ミグ21などソ連時代の旧式戦闘機に代わる兵器として、ロシア空軍最新鋭のスホイ35戦闘機の購入に強い関心を示している。
現在のところロシアは国際的な制裁を遵守しているが、北朝鮮が一度スホイ35を手にすれば核兵器の運搬手段を得ることになるので、我々としても注意深く見守る必要がある。北朝鮮は弾道ミサイルを開発したが、核弾頭はそれに搭載できるほど小型化していない。しかし、スホイ35があれば北東アジア一帯に北朝鮮が核攻撃できるだろう。もちろん、ハドソン研究所のリチャード・ワイツ政治軍事分析センター長が主張するように「ロシアが最新鋭戦闘機を輸出して制裁に違反するリスクを冒すよりも、航空機器のスペア部品を民間用と偽装して北朝鮮に供給する可能性の方が高い」のは確かである。いずれの場合もプーチン政権が北朝鮮に対する核不拡散のための制裁を骨抜きにするかどうか、注意深く見守らねばならない。
新戦略ドクトリン、ヨーロッパ、イラン、そして北朝鮮でのプーチン政権の行動に鑑みて、ロシアは国際安全保障における核の脅威を増幅させているうえに、フランクリン・ローズベルトが構想した戦後の世界秩序における大国の役割を果たしていない。プーチン大統領には世界の核安全保障問題でもっと責任ある行動をとるように要求する強いメッセージを発するべきである。その一環として、国際社会はロシアを国連安全保障理事会の常任理事国から除名するというのはどうだろうか。実際にはロシアに拒否権があるので、これはきわめて難しい。より現実的に「世界各国の指導者達は、第二次世界大戦終結70周年の声明で大国の責任について言及すべきだ」と私は提案したい。今や21世紀であり、この70年間に主要国がとった行動の方が日本やドイツが過去に犯した過ちよりもはるかに重要である。ドイツのアンゲラ・メルケル首相の場合は、そのロシアに対する宥和政策の観点からこうした案には関心を示さないかもしれないが、日本の安倍晋三首相にとっては70周年談話で責任を果たさない大国に言及することは有益である。
今年の2月には中国の王毅外相が「中露両国で『反ファシズム・抗日戦争勝利70周年』式典を開催して日本の「右翼」を抑え込み、両国が第二次大戦の戦勝国としての地位をこれからも維持してゆく」と語った。安倍首相がアメリカとの共同談話で戦後の民主的で平和な日本を強調する際には、中露枢軸への対抗のためにも「大国の責任」に言及すべきである。ブルッキングス研究所のロバート・ケーガン上級研究員は「ロシアと中国が挑発的な行動をとっているのは、自国防衛のためではなく、欧米主導の世界秩序で傷つけられた自分達のプライドを満たすためだ」と論評している。これはこの記事で述べたようなプーチン大統領の瀬戸際外交や地政学的なパワー・ゲームに顕著に表れている。よって核安全保障はロシアが責任ある大国の資格を満たしているのかを問い質すためには重要な問題なのである。(おわり)
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