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2015-03-17 00:00
(連載1)沖縄の「独立」をめぐって:沖縄と主権問題
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
この2月、講演で青森県と沖縄県に行き、それぞれの県の地方も視察した。第一印象は、沖縄は県民所得がわが国で高知県と共に最下位と言われながら、道路、公園、劇場、平和祈念館、公共駐車場その他の諸施設などのインフラ、施設が青森県よりもはるかに立派という感じだった。青森県の方が、中央政府から見捨てられているのではないか、と思ったほどである。沖縄県の年間総所得4兆円の内、国から入ってくるのが1.5兆円だそうだが、沖縄の地元紙によるとこれは必ずしも「国におんぶに抱っこ」ではなく、県民一人あたりの公的支出額は105万円で、他県と比べると17位だそうである(『琉球新報』2015.1.20)。どうも、実感レベルの印象とこのような統計数字がしっくりこないのが気にかかる。インフラ、諸施設などが立派に思えるのは、補助金が道路港湾やいわゆるハコモノに向けられて、県民所得の増加に結びついていないからだろうか。
それはともあれ、今回の沖縄訪問で強い印象を受けたことは、地元紙が「沖縄独立」のキャンペーンを張っているように思えたことだ。私が沖縄を訪問したとき、『琉球新報』は明治初年に琉球は独立国としてアメリカ、フランス、オランダなどから承認されていたといった歴史的過去を連載で掲載していた。フランスとの条約云々の記事をよく読むと、フランスの軍事的圧力のもとに結ばれた条約に関して、あたかも対等の主権国家として琉球がフランスと付き合っていたかのごとき記事になっている。
琉球新報社と沖縄国際大学主催で2月15日に沖縄の自己決定権(自決権)をめぐるフォーラムが開催され、富田琉球新報社長が挨拶をし、姜尚中聖学院大学学長(東大名誉教授)が主権問題をめぐって基調講演をした。富田社長は挨拶の中で、「沖縄が明治政府によって暴力的に併合された歴史は、国際法上の不正だということを『琉球新報』の連載で明らかにし、スコットランドの独立運動などを紹介してきたと」述べている。今回のフォーラムの趣旨に関しても、「琉球が『主権』を奪われたとの指摘を紹介した狙いには、『主権回復』という沖縄の未来に向けた筋道が含意されている」と述べている。
この『琉球新報』の論調や、また同紙などが主催したフォーラムの趣旨も、「沖縄は主権を日本政府によって暴力的に奪われた。沖縄の将来にとってこの奪われた主権の回復、つまり日本からの独立こそが重要課題だ」と主張しているとしか思えない。ただ実際に沖縄の様々な立場の人たちと話をしてみると、沖縄の日本からの独立を現実問題として考えている者は皆無と言ってもよいほどだった。沖縄の日本からの独立を真剣に考えているのか、また実際に沖縄は自立出来るしまた独立すべきだと思っているのかと、沖縄政界の指導部に近い人から一般の島民まで多くの人に尋ねた。今の自民党政権や米軍基地の在り方に強い批判を抱いている者も含めて、私の会った全ての沖縄県人が、「沖縄の独立」を現実問題としては考えていなかった。したがって、『琉球新報』の紙面や同紙などが主催するフォーラムの雰囲気と、沖縄の一般県民の意識があまりにも乖離していることに強い違和感を覚えざるを得なかった。(つづく)
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