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2015-03-17 00:00
礼節を欠いた朝日、岡田の「メルケル活用」
杉浦 正章
政治評論家
このままではドイツ首相・メルケルの訪日が、誤解のまま終わりかねない。せっかくの良好なる日独関係を毀損しても首相・メルケルに歴史認識で発言させ、これを金科玉条として政府への攻撃に活用する動きが、民主党と朝日新聞に見られたのは問題だ。両者は、中国の習近平が訪独で口を極めて対日批判、また中国首脳らがことあるごとにドイツの戦後処理を日本との比較に利用している流れにヒントを得て、メルケルに安倍政権を批判させようと試みたのだ。民主党代表・岡田克也にいたっては、確たる発言ではないのに慰安婦問題で早期解決を促したと曲解、事実上の誤報まで作り上げる始末だ。これに対してさすがにメルケルは百戦錬磨だ。歴史認識に関して「隣国の寛容もあった」とフランスの寛容さに言及、中韓の意固地さを暗に批判した。それにしても一国の首相を、よってたかって己の主張の正当化に利用するリベラル勢力の“さもしさ”には、目をおおいたくなる。
まず朝日の「安倍おとしめ戦略」は、極めて巧妙で根が深い。おそらくメルケル訪日と気付いて直ちに作戦を練ったのだろう。来日早々の3月9日に朝日を訪問させ、講演を行わせる日程まで組んだ。講演では歴史認識で安倍批判はしないと見たか、質疑応答で問いただす作戦まで練ったに違いない。ようやく質疑でメルケルは独仏の関係改善の歴史に言及。「他の地域にアドバイスする立場にない」としながらも、ドイツが欧州で和解を進められたのは「ドイツが過去ときちんと向き合ったからだ。隣国(フランス)の寛容さもあった」との発言を得た。たいした発言ではないが朝日が最大級のセンセーショナリズムで取り上げれば、全てのマスコミが追随するとの判断があったのだろう。結果的にはそうなった。
一方、岡田は朝日の巧妙さはなく、ただただ強引に歴史認識にひきづり込もうという戦術に徹した。まさに“邪道”である。なんと失礼にも40分の会談時間のうち30分を無理矢理歴史認識の話題に引っ張り込んだのだ。そうしてあの「慰安婦発言」の虚報を無理矢理引きだしたのだ。岡田によればメルケルはいわゆる従軍慰安婦の問題について、「現在の東アジアの状況を考えると、日韓関係は非常に重要なので、きちんと解決したほうがいいのではないか。日本と韓国は基本的な価値を共有しているので、和解を進めるべきだ」と述べ、問題の解決に向けた努力が必要だという認識を示したというのだが怪しい。なぜなら3流記者はかぎ括弧の中に「慰安婦」の主語を入れて「日韓関係は非常に重要だ。慰安婦問題などはきちんと解決したほうがよい」と報じたが、一流報道機関の報道は、NHKにしても、朝日にしても、かぎ括弧に入れていない。これは明らかに一般論としてメルケルが語ったものであろう。主語がないのに岡田が、慰安婦問題と言う主語を取って付けたのだろう。だから一流報道機関は、怪しいと感じて表現にニュアンスを付けたのだ。岡田は自分から持ちかけないのにメルケルが言及したと言うが、メルケルの来日は日独親善を目指したものであり、安倍政権に“殴り込み”をかけに来たのではない。
案の定、ドイツ政府は異例の打ち消しに出た。ドイツ政府のザイベルト報道官は13日の記者会見で、メルケルが民主党の岡田との会談で従軍慰安婦問題の解決を促したとの報道について「正しくない」と、一党の党首のメンツを丸つぶれにさせる表現で真っ向から否定。ザイベルトはメルケルが日本での記者会見で「(過去との向き合い方を)助言するために日本に来たわけではない」との立場を表明したとし、岡田代表との会談でも同じ「表現を用いた」と強調。「日本政府がどうすべきかというような発言をした事実はない」と述べたのだ。岡田は眼病に苦しんでいるが、耳までおかしくなったのだろうか。岡田は16日「誰が解決すべきかは言っていない。注意深く首相は避けた」と釈明しているが、あやふやな発言であることの証拠だ。朝日も岡田も、一国の首相を利用して何が何でも我田引水しようとする姿勢が見えて、卑しさすら覚える。そもそもドイツは対日関係を重視しており、習近平の訪独に際しても中国側は、ベルリンのホロコースト記念碑の訪問を打診したが、ドイツ側は拒否したと言われる。日本との関係を重視するドイツは、歴史をめぐる日中間の対立に巻き込まれることを望まないのが基本姿勢だ。
ドイツの暗い過去につながりかねないという配慮もある。元ドイツ大統領・ヴァイツゼッカーの演説は「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」だけが有名で、日本では安倍批判の材料となっている。しかしヴァイツゼッカーは、2000年に「過去に対する罪を認めるようにとの要求が、政治的恐喝の手段とされることは好ましくない。私は中国人が日本人によっていかに苦痛を受けたかを理解しているが、中国は過去の問題を政治的に利用すべきではない」と発言しているのである。このドイツ政府の立ち位置は中国とは経済関係を重視するものの、政治的には価値観を共有しない国という一線を引いていることを意味する。深い外交的な考察なしにひたすら来日する政治家を、自分の主義主張に活用しようとするマスコミも、政党も、視野をもっと広げなければならない。自民党も総務会長・二階俊博が慰安婦問題で「ドイツのメルケル首相にも『ちゃんとやりなさい』と言われた。あらゆる機関が努力して、一日も早く正常な姿にすることが大事」と「岡田誤報」にまるまる乗った発言をしたが、浅慮も甚だしい。最近は安倍の足を引っ張ることが仕事と考えているようだが、「風評」で発言してはいけない。
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