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2015-03-23 00:00
プーチン大統領の”所在不明”騒動に思う
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアのプーチン大統領は3月16日、11日ぶりに公の場に姿を現わし、重病説や失脚説を否定した。大統領は「ゴシップがないとさびしいでしょう」と記者団に冗談を言い、この間の“所在不明”騒動を説明なしで押し切った。だが、こうした独裁者的な態度にメディアから「大統領といえども国民に選ばれた管理者なのだから」と、たしなめる声も出ている。プーチン大統領は16日、ペテルブルグでキルギスのアタンバエフ大統領と会談、その一部を記者団に公開した。その場でアタンバエフ大統領は、会談前にプーチン大統領自身の運転で会場周辺を案内してもらったことを紹介、プーチン氏の健康に問題がないことをアピールした。
インタファクス通信によると、会談後、ペスコフ・ロシア大統領報道官は「大統領に関する噂については今後一切コメントしない」と宣言。さらに、この間のメディアの報道を列挙して「大統領はへとへとになっていたか、将軍たちに拘束されていたか」と皮肉っぽく質した。さらに、愛人との間にできた子供の出産に立ち会うためスイスへ行ったとの噂についても、「事実ではない」と言い切ったが、大統領が実際に何をしていたかの説明はなかった。ともかく、大統領が元気に公の場に姿を現し、世界のメディアをあわてさせた騒動は一件落着した。だが、野党指導者ネムツォフ元第一副首相が暗殺された直後の所在不明だっただけに、旧KGBの連邦保安庁とチェチェン共和国・カディロフ首長一派との権力闘争説や軍部の陰謀説などが依然としてささやかれていて、真相は不明のままだ。
今回の騒動を巡って中立系の「独立新聞」は、17日付けの電子版で「大統領の不在と社会の政治的成熟について」と題する記事を載せ、「現代民主主義社会では大統領は独裁者ではなく、国民に選ばれた管理者。運用している金も国民の税金なのだから、国民に関心のある様々な情報を開示すべきだ」と指摘した。プーチン大統領は過去最高の支持率を取り付け、少し増長しているのではないかと苦言を呈した形だ。
プーチン大統領は一昨年秋からのウクライナ危機への対応を一手に引き受け、米欧側に強硬な姿勢を取り続けている。クリミア半島を巡っては核兵器まで準備させ、無理やり併合を実現させた。今のところ、こうした強引さが成功しているが、このまま国民を無視して暴走すると、大変なことになりかねない。今回の騒動はそんな危惧を世界に感じさせたのではないだろうか。
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