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2015-04-19 00:00
低価格競争は国民全体の利益を損なう
玉木 洋
大学教員
酒の安売り規制のための酒税法改正が議論される中で、「消費者の利益」の保護を主張して、同法改正に反対し、安売りを支持する論調が見られる。しかし、安売りをよしとして、「消費者の利益」を近視眼的に見るのであれば、それは経済を破壊し、結局のところ大多数の消費者・国民の利益を損なうことになる惧れがあることを、冷静に認識する必要がある。
安売り競争を放置すれば、小売店は合理的な利潤を得ることができないまま、仕入れ費用を賄うだけのために、値下げ競争に応じて低価格競争での販売に応じざるを得ない結果となる。さらには、可変費用だけでも賄えればと、赤字価格でも販売をしなければいけないという事態に陥ってしまう可能性すらある。格安販売店は大量の仕入れなどで特別廉価な仕入れ価格や大幅な合理化が可能であっても、多くの普通の小売店はそうはならない。そうすれば、そういった小売店の倒産、失業が次第に増えていくことになる。
単純な仮定として、仮に1000円で1000人に売っていたら、100万円の売り上げで20万円の利益があったとしよう。これを価格競争の結果800円で売って0円の利益になってしまったとしよう。この小売店はやがて倒産することになる。他方、消費者の方は、800円の方がありがたいけれど、どうしてもそれに払うお金がないなら、最悪飲む量を2割減らすだけですむ。生死にかかわるような問題はない。むしろ、健康に良いぐらいである。
「シャッター通り」の問題も、「消費者のため」と言われた大規模小売店舗法の改正の結果である部分は否定しがたい。官公庁の入札の徹底も、それに伴う種々の問題が生じているともいわれる。「安い方が良い」ということが積み重なってきた結果、正規雇用を抱えずに非正規の低賃金労働者の雇用が増えてきたとも考えられる。国際的な経済問題を考える場合を含めて、このような、さまざまの連鎖を考えるべきであり、適正利潤を確保する適正価格が維持されることによる、健全な経済の維持の重要性が広く認識されねばならないのではないだろうか。
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