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2015-05-19 00:00
維新が“草刈り場”の危機
杉浦 正章
政治評論家
まず第一の不確定要素は「市長任期満了で政界を引退する」と言明した大阪市長・橋下徹の「辞め方」であろう。全く政治家を辞めてしまうのか、それとも来年の参院選に出馬するのか。衆院選に出るのか。など様々な選択肢があるからだ。本人も「2万%ない」と明言した府知事選立候補を、あっさり撤回するタイプであり、「政治家を辞めるのやめた」になる可能性も否定出来ない。さらなる不確定要素は、年末までは政治家を辞めないのであり、これが維新の党の路線に陰に陽に影響を与える可能性があることだ。党内は橋下に近い大阪系議員と、松野頼久ら民主党出身の議員の間で相克が始まっており、安保法制への対応が絡んで亀裂は拡大せざるを得ないだろう。これにストップをかけられるのは橋下が求心力を維持出来るかどうかだろう。維新の党内では早くも総務会長・片山虎之助が5月18日、BS日テレの「深層NEWS」で橋下について「今までにない政治家だ。国政はやった方がいい」と述べ、国政への転身に期待感を示している。
今後こうした声は党内だけでなく中央政界にも出てくる可能性がある。と言うのも住民投票がたったの1万票の僅差であったことは、橋下の力量を改めて示す結果となったからだ。マスコミの間では橋下の敗北により、安保法制で維新を使っての野党分断が困難になったとの見方があるが、これは大法案を巡っては与野党が食うか食われるかの状況になることを知らない見方だ。維新を使った野党分断が不可能なら、維新自体を分断する動きが生じ、これが民主党の分断にも連動する可能性があるからだ。民主党幹事長・枝野幸男は「維新の党の事情を配慮しながらしっかりと調整したい」と、維新との野党再編に意欲的だが、ことはそう簡単ではあるまい。
もともと維新の橋下に近い大阪系議員は、橋下が官公労批判の急先鋒であることも影響して、民主党出身議員らと一線を画す傾向が強い。とりわけ最近の民主党は、代表・岡田克也が、党内バランスをとって左傾化して連合の影響も強く受けていることから、橋下はもっぱら保守系の・前原誠司らと接近している。かつての維新の戦略は民主党右派を切り取っての政界再編であったが、さすがに、住民投票敗北はその勢いを衰えさせた。しかし、橋下というたがが外れれば、維新は“草刈り場”となる可能性も否定出来ない。大阪系議員らは「松野氏が民主党に近づけば近づくほど、東西分裂の可能性は高まる」とけん制している。民主党も触手を伸ばすだろうが、自民党も黙ってはいまい。そのきっかけは、橋下の“12月引退”に先だって、今国会での安保法制を巡る動きとなって展開する可能性が強い。安倍官邸は一貫して二重行政を改革しようとした橋下を支持しており、橋下と首相・安倍晋三や官房長官・菅義偉との関係は住民投票を巡ってより強固なものとなったとみるべきであろう。したがって橋下になお求心力がある内に安保法制での協力を要請する可能性が強い。
一方で民主党は安保法制を巡って「安倍政権が進める集団的自衛権行使は容認しない」との方針を決めたが、行使自体の賛否を示すには至らなかった。その内実は、旧社会党系の「行使容認しないことを明確にすべきだ」と言う意見と「政権復帰後のことを考えて行使の余地を残せ」とする保守系の意見が激突、収拾がつかなかったからだ。このように安保法制を巡っては民主党と維新それぞれに内部事情を抱えるかたちとなっている。したがって橋下が12月の引退を表明したからといって、直ちに自民党からの野党分断の動きが挫折するとは思えない。むしろ松野が代表に選ばれた場合には、草刈り場となることを回避するために、民主党と同一の行動をとらず、妥協に動く可能性も否定出来ない。とりあえず党の団結を維持するには、自民党に原案のままの強行突破を行わせないことも重要であるからだ。
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