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2015-05-22 00:00
翁長は二重外交の“禁じ手”に走るな
杉浦 正章
政治評論家
国を誤る行為の最たるものは二重外交である。日本では昭和初期から旧陸軍が独自外交を展開して、国益を大きく毀損した。それをいま自治体の長が行おうとしている。沖縄県知事・翁長雄志が5月27日から訪米して、米政府や議会に普天間基地の辺野古への移転反対を訴えようとしている。もとより翁長の狙いは反米色の強い自らの支持団体・組織向けのパフォーマンスにあり、米政府がまともに対応するとは思えない。しかし、事情を知らない米政府関係者が言質を取られる恐れもなしとは言えない。また「隙あらば」と対日宣伝工作を展開しようとしている中国などを利する恐れがある。政府は舞台裏で翁長の主張と意図を詳細にわたって米側に伝えて、連携を図っておく必要がある。文化交流などの民間外交は積極的に進めるべきだが、翁長がやろうとしている行為は、憲法違反の二重外交だ。憲法の第73条2項には、内閣の事務として「外交関係を処理すること」と明記されており、外交権は内閣に付与されているからだ。憲法上、地方自治体には、外交権は認められていない。地方自治体が、政府の方針とは違う外交を展開すれば、日本は、二重外交のリスクに晒される。
しかも、憲法上の規定がありながら、なし崩し的に地方自治体が外交権を行使するとなると、日本は、中国や韓国など周辺諸国によって、内部から切り崩される可能性が生じて来る。さらに翁長の発言から予測すれば、政府の特権である安全保障政策にも踏み込もうとしている。外交・安保の両面から政府を揺さぶろうとしている意図がありありと感じられる。これはどう見ても、使ってはならない“禁じ手”である。記者会見などの発言から総合すると、翁長は米政府関係者に辺野古への基地移転について「絶対に建設することができない」と言うのであろう。その理由として基地反対闘争の激化を指摘する。現在は100人規模の動員を1000人規模にまで拡大させる方針を表明し、「とても日本政府が止めることは簡単ではない」などと主張するだろう。さらに翁長は「こういったことを考えると、絶対に辺野古に基地を作らせない、ということをアメリカに伝える。『あなた方が決めたからできると思ったら間違いですよ』と言う」のだそうだ。
加えて、辺野古移転が挫折したら、日米同盟が崩壊することを強調する。「辺野古がだめになったら、日米同盟が崩れる。私は日米安保体制を理解しているからこそ、理不尽なことをして壊してはいけないと考える」と述べるのだそうだ。とにかく、脅したりすかしたりの立場で臨むのだろう。またハワイで起きたオスプレイの事故を取り上げ、「普天間でハワイのように落ちたら、日米安保体制は砂上の楼閣になる」と強調して、配備撤回を求めるだろう。明らかに政府の外交・安保特権に踏み込んだ言動を繰り返すものとみられる。もちろん米政府は「基地移転での交渉相手は、あくまで日本政府」との立場だが、問題は翁長が米政府関係者の不用意な発言の「片言隻句」を金科玉条として取り上げる可能性が高いことだ。その対策として政府はまず、翁長の主張とその矛盾点を事前に国務省や国防総省に伝え、注意を喚起する必要があろう。間違っても両省幹部が翁長と会うようなことは避けさせるべきだ。
翁長は「日本政府を相手にしていたら、どうにもならないから米国に行く」のだそうだが、明らかにプロパガンダ合戦で政府を揺さぶる意図が明白だ。基地反対闘争には中国の資金が入っているといったうわさや、中国の工作員が観光客に紛れて入り込んでいるという説もある。翁長がすごんでいるように普天間で大事故が発生したり、辺野古での衝突で年寄りが死傷したりすれば、マスコミも含めて矛先は一挙に政府・与党に向く危険性がある。とりわけ、沖縄タイムズと琉球新報の現地2紙は、極端なまでに扇動的で偏向した論調を繰り返し掲載しており、県民の動向への影響力も強い。しかし、翁長は「80%の県民が反対」と主張しているが、知事選結果はそうではない。有権者109万人のうち翁長支持は36万票であり、33%に過ぎない。賛成の仲井真弘多と、少なくとも反対ではない下地幹郎の票を合わせれば33万で伯仲している。40万の棄権票も支持に回りうる層だ。政府は翁長を説得しても、かつては辺野古移転に賛同していてた“転向”を二度繰り返すことはあるまい。翁長の嫌がる言葉だがここは「粛々と埋め立てを進める」しかあるまい。
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